otomisanさんの映画レビュー・感想・評価

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太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)

4.2

 山下警部が満州男と名乗るのだが警察に30年ともいう。報道によれば45歳、ならば生れは満州建国の頃だろう。小学校卒業で敗戦、18歳で警察に入ったなら朝鮮戦争から講和の時分である。不始末などできない丸の>>続きを読む

螢草(1954年製作の映画)

3.5

 日本が占領下から脱したことで海外渡航の途も広がった。国費の枠が増え留学する人がどっと増えれば数年後、成果を上げて戻って来る人も溢れるわけで。すると、口減らしで追っ払ったのに戻ってきやがったよと嫌な顔>>続きを読む

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

4.1

 求人の張り紙を頼りに採用担当の面談でも待っているかのような、若くない女である。それが殺人を自供した後の姿で、その場が警察署の一室とは誰も思うまい。ところが現れた「担当者」はやおら供述調書の読み上げを>>続きを読む

離婚(1952年製作の映画)

3.8

 離婚なんて珍しくもない昨今、返ってむき出しに「離婚」と突き付けられるとオッと思ってしまうんだが、Filmaを覗くと目じるしに6件、1年前と6年前に来訪者ありで余程げんなりするような代物であったかと感>>続きを読む

犬部!(2021年製作の映画)

3.9

 俺はウチのヒミコが世界一というクチなので、実はイヌ全てを愛せるというのが分からない。犬部!的花井、柴崎のあの必死さもすべて愛せるなら当然なのだろうが東京と十和田の二拠点活動では自分の身もこころももた>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.1

 奇譚が生まれる現場に立ち会うようなこころのどよめきを覚える最後だった。

 深い山を控えた信州の奥地で、そのヤマに馴染んで暮らす学童通いの娘がヤマに姿をくらます。ひとりでヤマに分け入る事は初めてでは
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お引越し(1993年製作の映画)

4.4

 結婚のためならエーンヤコーラと多分こころも軽く自分を偽って来た貴一父ちゃんだが、そのメッキは12年前、ナズナ母ちゃんの悪阻の最中にもう剝げ落ち始めていた。
 女はそんな男のうその皮が剥がれるのを忘れ
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死に花(2004年製作の映画)

3.3

 漫画みたいで楽しいのだが、2004年と聞くとあの頃はどんなだったかなぁと振り返って、プラザ合意だのバブルだのを皮切りにいろんな「敗戦」のオン・パレードの十数年な感じで、あの爺どもは高級老人ホームに滑>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

4.0

 鏡の中に人殺しがいる。事件から十年経って面立ちが父親そっくりになった誠は正気を保てそうにない。
 直後の現場へ最初に踏み入ってしまった誠が犯人である父親にも遭遇して、僅かばかりの真っ赤な札を紙屑のよ
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夏の庭 The Friends(1994年製作の映画)

4.2

 山下が三日も休む。四日目、ばあちゃんが死んだという。
 きのうまでぴんぴんしていたのが次の日には木箱に収まり、大窯で2時間も焼かれて白くお骨になった。ある晩、山下は大きなぬいぐるみとプロレスする夢を
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見上げてごらん夜の星を(1963年製作の映画)

3.8

 「見上げてごらん」と誰に囁くのだろうと思ったのである。「二人なら苦しくなんかないさ」と街の夜の谷間を駆け抜ける二人を思い浮かべるのである。

 うーん、確かに名もない星がささやかな幸せを祈ってくれて
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グッドフェローズ(1990年製作の映画)

3.9

 主人公ヘンリーが学校にも行かずにイタリア系のマフィアにつながって稼いでる。アイルランド移民の倅が何でかというとお袋さんがシチリア人で、街のボスと同郷。そんな誼でボス、シセロの下っ端で稼ぎ出したんだが>>続きを読む

太陽西から昇る(1964年製作の映画)

4.0

 どうして俺はここにいるのだろう?
 寂しい父子家庭が転じて今や石原裕次郎でも住みそうなモダニズム・テイストの屋敷を「我が家」とし、俺は空っぽのままシンフォニーに浸る。

 不正経理を働いて、その事情
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好人物の夫婦(1956年製作の映画)

3.9

 原作志賀直哉というのがどこか黴臭い。昭和三十一年の逗子と大阪なら毎日電話で亭主に牽制を掛けてやればいい。しかしそれもどうも、いかにも牽制してますという風になりそうな恵子と良の持ち味というか。「電話で>>続きを読む

同胞(はらから)(1975年製作の映画)

3.7

 キャベツを勧められて赤字になって、次にニンニクがいいと言われて大赤字になって今度はニンジンがどうかと言われる。
 言われるまま生きてきたような高志が今度は青年会長に持ち上げられてもなにが面白いわけで
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燃えつきた納屋(1973年製作の映画)

4.0

 またの名を「燃えつきた納屋」とされる農場。そう呼ばれても動じないところに、呼ぶ側の挑発にも無言の圧を返して寄越す余裕を覚える。それがフランスでの当たり前であろうが、遠く日本で誰が気付くか?
 たとえ
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庄助武勇伝 会津磐梯山(1960年製作の映画)

4.1

 ドラマ「八重の桜」で綾瀬はるかが度々「ならぬものはならぬのです」というのだが、会津郷士、小原庄助の「朝寝・朝酒・朝湯」なんて相当な「ならぬ類」だろう。それでも、「のむ・打つ・買う」よりはよほど悪気が>>続きを読む

学生たちの道(1959年製作の映画)

4.0

 同じ占領地でもパリと東京の差の著しい事。

 ヒトラーから生け捕りにされて、それでもとうとう一度も腰を据えられる事のなかったパリが不死身の妖姫魔都のように見えてしまうあの華やかさ。その中で囁かれるの
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ごはん(2017年製作の映画)

3.1

 小学生のようなヒロインである。何でかというのも、母親が死んだあの日で止まってしまった父娘関係の澱みを想えば分かるんだが。まあ、そんなもんかというところ。
 監督は百も承知でこのひかりにきつく偏った物
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東京の女性(1939年製作の映画)

4.0

 原節子に釣り合う男が誰もいないという情けない東京を舞台にして、原は舶来乗用車のセールスで頭角をあらわし男の同僚たちの顔色を失わしめる。タイピストとして在勤の頃は将来を言い交わしたいような相手のいたも>>続きを読む

燃やせ(2022年製作の映画)

3.8

 また三日も経ったらどうなっちまうことやら。

十代の狼(1960年製作の映画)

4.0

 俺のヤマは殺しだぜ、と云うわけで老刑事佐野浅夫はカンを頼りに殺人強盗犯を土地のチンピラの仕業と目星を付ける。シマに馴染んだ古株には知りたいネタが自然と入って来らぁ。
 どこか悪徳刑事な臭いがたなびく
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アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.0

 超自然の爆走王ロードランナーが手持ち無沙汰と見えアステロイド・シティに根を生やしてまるで走らない。物語によると不滅な筈の仇敵コヨーテは冒頭すでにパンケーキのようにぺしゃんこになっていたそうで、次の放>>続きを読む

お隣さんはヒトラー?(2022年製作の映画)

4.2

 アイヒマン捕縛が報じられて間もなく、老ポルスキーは四半世紀ぶりにヒトラーと再会してしまう。
 はじめての出会いは1934年、世界チェス選手権大会の会場で、ポーランドからの参加者ポルスキーは来賓の総統
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新しい背広(1957年製作の映画)

3.8

 こんな短い映画なら木戸銭も安かったんだろう。起伏の少ない世話物で館を出たらもう忘れてしまって三日後にまた見てしまうなら東宝の思う壺だろう。
 ところがこちら、内容の充実というのでもないんだが、物語に
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ミレニアム・マンボ(2001年製作の映画)

4.1

 「10年前『彼女』は」とジャッキーの身の上を物語るのがジャッキー当人以外の誰だというのか?あくまで「彼女」を通し、今の自分を明かさない2011年の「わたし」(仮称)がどこにどうしているのか?夜明け前>>続きを読む

山の音(1954年製作の映画)

4.1

 駅から北に歩けば周りじゅうが頂きである。尾根の木々が数えられるほど近く、高く聳えるでもないのにあの妙に山深げな。自宅はその懐にあるのだが、その山が、ある深夜、鳴ったんだそうだ。
 それは戦後間もない
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大曽根家の朝(1946年製作の映画)

4.1

 俳優小沢栄太郎の戦後新時代、進む道がこれに定まってしまいそうな、大佐で陸軍省の役人、大曾根一誠であった。
 しかしその様子は軍人の四角四面ではなく大地主の旦那のようである。一見もの柔らかに親し気で、
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シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

4.0

 アメリカで大統領が気に入らないからといって州が連邦からの離脱を申し立ててもどうなるというのか?

 ところが19州も一度に離脱宣言するとは、出てゆく同士どんな申し合わせとあんな奴をこのまま大統領に据
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エレクトリック・インディゴ(2013年製作の映画)

3.8

 電気仕掛けのインディゴ?電脳インディゴ?
 どちらも違って、インディゴの12年とは実の売主「母親」とも知らぬ間につながっていて、突然の母親の出現で大揺れする電線のようなもの。電線は揺さぶられ引っ張ら
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ハリーとトント(1974年製作の映画)

4.3

 一見してネコとおしゃべりという柄に見えない男だ。それが「ラス・コロンボ」から始まって「ビング・クロスビー」と歌手当てクイズをトント相手に繰り出す。トントはそのあとラス・ベガスで「ゴッドフリー」も正解>>続きを読む

下町(1957年製作の映画)

4.3

 いっそ二人は出会わなければよかったろうか。

 シベリアから生還した鶴石は余所の男と暮らす妻の姿を避けて街のはずれへ。屑鉄集めの仕事場の小屋を塒に借りて、どんな夢を、見ては忘れて暮らすのだろう。
 
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美しい夏キリシマ(2002年製作の映画)

4.0

 なにが美しいのか?
 夏に終わりを告げるお盆を境に大日本帝国は連合国軍に降伏して占領下ヘ。来る秋は皇国民の肩の荷も下りて、グラマンに撃たれる理由もなくなって一層美しく感じられるのだろうか?

 鉄の
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孤独な惑星(2011年製作の映画)

4.0

 男にしっぽを振らない感じの竹厚と一見瓜二つなシルエットの男が向かい合うと、男が男性ではなく綾野性なんですと答える感じであって、竹厚もそれにしっぽを立てて見せるという感じになる。というわけである。>>続きを読む

眼下の敵(1957年製作の映画)

4.1

 戦没した妻の面影が米艦長の打ち明ける過去に色濃くよぎるが、それも一瞬に過ぎない。その湿っぽい話を棚上げにして麾下の駆逐艦はUボート狩り、謎の針路140を崩さない不審艦との一騎討に臨む。
 すると、そ
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乾いた花(1964年製作の映画)

4.3

 一人目を殺る池辺が受けた斬り返しは「手前、女房子は?」であった、という。池辺がその殺しを私する理由があるとすれば、そのひとことに由来するだろう。
 その問いに刻まれたところが己が未来の標と認めるべき
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