otomisanさんの映画レビュー・感想・評価

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ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

4.1

 カーロイの黒々とした言葉が絵を濃く染め上げ、雨続きの炭山を覆う。その難解詩が意味を成したのがいつだったか誰も覚えていまい。文壇から追われたのか、詩泉が枯れたのか、ならば今、1988年の雨の中、出炭索>>続きを読む

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)

4.0

 毒だから止しな、と云われながらもあおる酒にはのんで捨てたい思い出があったりするが、クリスチーナ、フィリピンの下請け縫製工房で出した焼死人累々の思い出をどう振り捨てる?

 毒と承知でのめり込むビジネ
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猿の惑星(1968年製作の映画)

4.0

 「三十過ぎのヤツの云う事なんか信じるな」と告げる男は二千歳。キャリアのほとんどを宇宙で寝ていたわけだが、齢をとり過ぎてもう自分がいくつなのかも分からない。
 これだけでも笑っちゃうんだが、言った相手
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砦のガンベルト(1967年製作の映画)

4.1

 焼け落ちた騎兵隊砦の死屍累々たる中ににわか作りな十字の墓標が一基。
 誰を葬ったか、わけ知りらしき者は黙して言わず、さりとてキリスト教徒の眠るこのささやかな墓を疎かに検めもできず。さらに、墓のかたわ
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ゴジラ(1954年製作の映画)

4.0

 当のゴジラもさることながら、議会公聴会での小沢議員(菅井きん)の「バカ者」なる一喝が目を惹いた。
 これは、大山なる委員が発した、ゴジラ問題が惹起させる民心不安、ひいては国際問題までを懸念して、市民
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マーサ(2019年製作の映画)

4.1

 マーサはちゃらんぽらんでした。
 アンジーを巻き込んでしまってほんとにごめんなさい。おかあさんの最後の言葉を聞きそびれてしまいました。でもけんかになって終わらないでよかったかもしれません。もう会えそ
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119(1994年製作の映画)

4.0

 火事と喧嘩が江戸の華なら失恋は映画の華。何輪咲いたんだろう。

 キヨシローの声を借りて、大切な事なのに言えなくてゴメンと歌われるのだが、この御免、自分に向けて言ってるようで、それというのも相手はど
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LAST LOVE/愛人(2014年製作の映画)

4.0

 火野正平といえば昔から女が運命を背負ってくる感じ、よくもわるくもだったが。いくつになっても引き受けちまうんだなあ。

 真底、幻のギタリストになっても、正平のギターにしか正気を示さない女でも、ある晩
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イノセント(1975年製作の映画)

4.0

 愛人テレザの取り合いの末に決闘?
 いっぽう、D氏による原作刊行の5年後1897年、トリノ伯ヴィットリオ・エマヌエーレが侮辱の廉でフランスはシャルトル公のアンリ王子に決闘を申し込み破っているが、これ
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ミニミニ大作戦(1969年製作の映画)

4.0

 メディアに露出する犯罪王ブリッジャー。モリアーティ教授以来のこと。それもあろう事かトイレの中とあっておカンムリだろう。
 そうさせたチャーリーの馬鹿たれが持ちかける儲け話を冷静には受け取れないが、そ
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カウボーイ(1958年製作の映画)

3.8

 「ミスターロバーツ」のおっちょこちょいパルバーと「お熱いのがお好き」のダフネ嬢の間でジャック・レモンがカウボーイになっていた。全然不似合いなんだが本人はやる気満々。ただし、牧童になりたいというのでは>>続きを読む

大仏廻国(2019年製作の映画)

3.7

 歩くかどうかはともかく阿弥陀様は「南無阿弥陀仏」と唱えれば、お迎えに来てくれるもんだと思ってたのは遠いむかしの事で、いまどきは大仏なんてゴジラの兄貴分ぐらいのつもりで見てしまう輩さえいるらしい。
 
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お茶漬の味(1952年製作の映画)

4.0

 断層夫婦が接合を保つのは互いのプレッシャー故という誠に厄介な背景の話なんだが、お茶漬けの取り持つ縁とかで揺るがぬこと巌のごとくなりにけり。なんて、ちょっと調子が良すぎはしないか?

 それにしても佐
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街の上で(2019年製作の映画)

3.9

 死ぬまで三十路が巡って来ませんように、という感じ。ギター一本で飯が食えりゃあよかったんだが、すっかり薹の立った青少年、青のどやしつけても始まらないしな、若いまんまで終わってる感じの日々。
 ところが
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男はつらいよ(1969年製作の映画)

4.1

 20年の不沙汰で。「生きてたか」というくらいなのに。柴又に戻ってみれば迷惑と不快の数々でみなを揺さぶる昔と変わらぬガラッパチ振り。
 陽気な渡世人の悪気の無さはその通りなんだが、堅気の者に交わると渡
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喜劇役者たち 九八とゲイブル(1978年製作の映画)

4.1

 タモリがタモリ(芸振)を演じるというわけで、タモリ以上にタモリらしくて一層オモクロくないといけない。
 そこで、タモリに常人を越えた状況を与えようというので78年当時のタモリのお家芸で好事家御用達、
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ル・バル(1984年製作の映画)

4.0

 はじめて会ったあの時のように . . .

 ときが人を切り苛んで半世紀過ぎても想いはそのまま、あなたと踊りたいもう一度。なんて夢物語、たとえば町娘が大人の仲間入りするようなささやかなわたしの「舞踏
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日本ゲリラ時代(1968年製作の映画)

3.5

 令和のいま徴兵令状が届いたら、きっと但し書きに「免除には一千万円を要しますが徴兵期間を過ぎたら返金されます。」なんて書かれるだろう。しかし、還付金では引っ掛かってもさすがに徴兵詐欺ばかりは引っ掛かる>>続きを読む

肉体の門(1964年製作の映画)

4.2

 「飢えて妹は今ごろどこに」と歌われて、わたしはここでパン助で。
 そのときマヤがポツリと思った相手はボルネオで戦死した兄さんで、形見となった日の丸の寄せ書きをお守りのようにして里を出たもののなんの助
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浮雲(1955年製作の映画)

4.1

 高峰(ゆき子)の面白いことなんか何もありゃしない、という風でいても身体は正直に反応してしまう感じが、森の農林技官・富岡と似た者同士という。見た目には、嫌味な富岡とはケンカの種は数知れずと思わせるが、>>続きを読む

激突!(1971年製作の映画)

4.3

 最後まで名乗らないままでいやらしい。ただ、いやらしいのはあれがヒトではないかのような描き方に徹した監督の方で、トラック・ドライバー(TD)は名乗るいとまがなかっただけの事である。
 ついでにいうと、
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愛と死の谷間(1954年製作の映画)

3.9

 ヒロイン?津島恵子は愁い顔というより仏頂面というべきで、これにぶつけるのが何とも憂鬱顔な芥川でマイナス掛けるマイナスがもっとマイナスという感じだが、女医津島の顔を見れば病気も憂えて逃げ出すメリットは>>続きを読む

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)

4.1

 ナチスも一部の市民に強制退去を迫ったが「移転先」の確保はした。ドイツ人にできてフランス人にできないのは行政であり「配慮」である。
 更にナチスは彼ら退去民に与える決着を見据えており、それを目的として
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GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)

3.9

 文句を言っても始まらないが、少佐がいとも簡単に人形遣いと融合してしまうのが気に食わない。もう少し電圧の違いだか性格の不一致があってもいいんじゃないか?
 人形遣いの方はもとより電子回路上で「自然発生
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夢見る人々(1953年製作の映画)

3.9

 ざっと8年の無沙汰の末の再会であろうに、熱海の停車場で伴と澄子のずいぶんと明朗で淡やかな様子があとあと気になった。
 南方へ軍属として派遣された伴が人生の四分の一、8年どこに留め置かれたか、その事情
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甘い汗(1964年製作の映画)

4.1

 昭和39年のあぶら照りを大汗かいて乗り切った人々に京マチ子の「甘い汗」はどんな妄想を促したろう。
 マチ子の滴らせる甘い汗に感応した政商権藤が溺れる肉欲地獄。情炎に焼かれてつい本当の事を漏らし13年
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(1963年製作の映画)

4.0

 母ふたりの目前で息子二人が死んでゆく。相次ぐ二人の死で母ふたりは何を生きて来たのか分からなくなりはしないか?それでもそのままここで生きてゆくという。

 ここは昭和38年の広島。新築なった広島飛行場
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異邦人(1967年製作の映画)

4.3

 カミュの読者はママが鬱陶しいスネかじり世代が多かっただろう。だから「太陽眩しいぜ」だの「今日、ママが死んだ」なんて若者でなきゃ言えなそうなセリフに感じてしまう向きが多いのではないか。
 マストロヤン
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愛がなんだ(2018年製作の映画)

4.1

 恋患いとか恋は盲目とか言われるけど、どちらも片思い、片寄った間柄だろう。相手が気付かずにいるうちが蕾、両想いを迎えりゃ開花大輪で結構だが、相手が別な思惑を醸し出して来たらどうか?
 というわけで、ど
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ふたり(1972年製作の映画)

4.1

 全編これ男女二人の行き掛かり、秘境マラケシュからパリ、NYCまで、浪漫そのものじゃないか。
 なにより女は高名なカバーガール。亭主気取りの写真家を振って帰国の途上とくれば、どんな過去のある男を宛がう
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.0

 薹の立った子役15歳ゲイルはステージママがPR会社まで立ち上げて意気盛ん。その煽りも存分に浴びて生意気盛りだが、ドラマで共演するランスは一足先にスターになったのに比べおやじ顔のこちら生意気ついでの悪>>続きを読む

花のあと(2009年製作の映画)

3.9

 武家の風儀は厳めしい。ましてひとり娘に剣術まで仕込んで「藩内随一」と半ば揶揄われるような寺井甚左衛門の家は衝くべき隙を感じない?

 はたしてそうか。この父が娘・以登の許嫁に認めたのは凡そ正反対な「
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強虫女と弱虫男(1968年製作の映画)

3.9

 令和の世では男娼にふつうの女が貢いで身体を売る羽目に至る. . . ただ男と女というのならいつの時代もおんなじかと、およそ笑えない。

 笑えないついでに。強虫女事件の10年後、筑豊、三池地方の労基
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かげろう(1969年製作の映画)

4.1

 犬が二十日もかけて行方知れずの飼い主を探し出し、その左腕を銜えて戻って来るという。その以前、飼い主トヨの死骸は櫓漕ぎ船に牽かれて夜の海峡を運ばれてきて埋められていた。尋常な話ではない。

 犬から告
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.0

 尖んがり顔で勝負服、にっこりカジュアル日曜日、どんな顔でもお求めのままに。
 誰がどんな顔をして着こなして見せるかで売れ行きが変わってしまう。こいつを一発でキメられないともう二の矢をつがえる暇はない
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リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

3.8

 来るべき時、運命と向き合いたくない。そんなヤツが意外と多かった。こんなループった時こそ出る本音だろう。

 いっそ、今で時間が止まっちまえば好都合だが、自分が止まっちまえば死んだも同然か?
 そこで
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