津軽系こけし

自由の幻想の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

自由の幻想(1974年製作の映画)
4.1
無意識の動物園


【カオスどころの騒ぎじゃない】

🟦ナポレオン軍に処刑されるスペイン民衆の「自由くたばれ」の叫びは、現代のパリの公園で女が読む小説の中の話。このように人物を変えながら全く脈絡なしで挿話が綴られてゆく。ついでに、会食の椅子が便座であったり、突如戦車が現れるなど、参るほどカオスな展開が続く。

⬛️矢継ぎ早に続く連想ゲームのような映画です。連続するカオスな展開は予測不能すぎて、ほとんどコントのようだ。

「自由」をテーマにしたルイスブニュエルのショートショート集とでも言うのか。なにしろ「アンダルシアの犬」を撮った人だから、それぞれのシーンに意味があるかすら怪しいところだ。

【意味のないものの自由】

⬜️意味的な場面を挙げるとすれば、導入のスペイン民衆の処刑シーンくらいなものだろう。このシーンに言われる「自由くたばれ」の叫びは、現代にて警官による民衆の弾圧場面で反復されている。スペイン民衆を処刑する残虐な過去が、カオスで自由な展開が続く現代で繰り返されることで、自由に対する疑問が生まれた。

このような対比から意味のないものの「自由」が如何なるものか私は考えてしまった。だからこの作品で続いた混沌は、自由の正負を極める我々の意識の旅であったと思うのだ。

【まとめ】

🚽しかし変な映画だった。1番好きなシーンは、ご飯食べながらトイレするとこ…という文言でいかに奇怪な映画か察していただけると思う。ブニュエルの作品はすごく波長が合う瞬間があったりで、今のところ1番気になっている。

「哀しみのトリスターナ」はそれが最高にハマっていたわけだが、こちらはイマイチであった。
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