Omizu

自由の幻想のOmizuのレビュー・感想・評価

自由の幻想(1974年製作の映画)
4.5
【1977年キネマ旬報外国映画ベストテン 第3位】
ルイス・ブニュエルの不条理劇。モニカ・ヴィッティ、ミシェル・ピコリなどが織りなす群像劇。

頭がおかしくなるかと思った。ロイ・アンダーソンの世界に近い気がする。現実と地続きなのにちょっとずつ違う世界が展開される。これぞ「シュルレアリスム」のブニュエルだ。彼の真骨頂を観た気がして大満足。

不審者に渡された歴史的建造物の写真をみて「卑猥すぎる」と子供から取り上げる。凱旋門の写真で「これはヒドい」と夫婦揃って言うのが笑える。

修道士たちはタバコを吸ってカードで遊ぶ。お祈りをするがどうやらキリストとマリアが逆になっているようだ。赤ちゃんを抱いたキリスト像にマリアを拝む。

便器に座って歓談しこそこそ食事をする、大量殺人で死刑になったのに釈放される、警護を伴って動物園に行く、などなどやりたい放題のナンセンスコメディ。

冒頭は「自由くたばれ!」と言ってフランス軍に処刑されるシーン、最後は動物園で「自由くたばれ!」と言ってフランス警察に包囲されるという円環構造になっている。

自由とは何かを改めて考えさせられる。自由が過ぎるとかえって不自由になるのだろうか。タイトル通り自由なんてものは幻想にすぎないのか。囚われた思考を解き放ってくれる作品であることは確か。

非常にセンスがよく笑えるこれぞブニュエルという傑作!
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