ワンコ

オーメンのワンコのレビュー・感想・評価

オーメン(1976年製作の映画)
5.0
【歴史的考察 + リアリティのあるホラー表現も】

ちょっと余談から…。

イギリス人は日本人と並ぶ幽霊好きとして知られている。

4月6日の毎日新聞オンラインの記事に、「なぜイギリス人は怪談好きなのか、幽霊大国の光と影」という記事があった。

長い記事なので簡単に抜粋して紹介すると、前段では、社会不安やストレスが広がると超常現象への関心が高まる傾向があって、現代ではコロナ禍がきっかけになって、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルの過剰なガザ地区攻撃などが社会不安に拍車をかけてまた怪談が注目されるようになったと考えられると書いてあった。

更に、イギリス(僕としては欧州もアメリカも同様だと思う)では17世紀から18世紀にかけて伝染病や寒冷化による農作物の不作で社会不安が増大、”魔女狩り”が行われ、これに異端排斥の考えや同調圧力が加わり、虐殺など事態を一層ひどいものにしたと考えられるとのことだった。

現在ではキリスト教として公式に、過去に魔女狩りを行ったことを認め反省を表明しているらしい。

もう一つ、個人的に大変面白い視点だなと思ったのは、宗教的な観点から”ダーウィンの進化論”が「人間は神が創造した」とのキリスト教的価値観を転換させ、同時に宗教的権威が揺らいだことで異端的な考え方のオカルトがその後も欧米で存続することになったと考察していることだった。

ホラー映画の傑作と言われる作品は、怖いか否かに加えて、社会不安をどのように映したかも評価のポイントになっていると思う。

1970年代は映画がテレビに対して復権した時代と言われているが、その中で「オーメン」はホラー映画の金字塔のひとつみたいな存在だ。

ホラー作品の先駆けと云えば1973年公開の「エクソシスト」だが、「エクソシスト」が、アメリカで女性解放運動が進み、離婚する夫婦が増え、ひとり親となった子供(映画ではリーガン)の孤独が背景として描かれたのに対して、この1976年公開の「オーメン」は明らかにアメリカ社会を侵食する希望の見えない漠然とした社会不安をホラーに置き換えて描いているように思える。

70年代は、ベトナム敗戦、石油ショックなどイスラム社会の台頭、ウォーターゲート事件などアメリカ国内の政治不審、高インフレなどでアメリカの最も暗い時代と言われている。
テロが体勢への対抗手段として注目され増加したのもこの時代だと思う。

ただ、二つの映画に共通して言えるのは形骸化してしまった宗教の力の衰えだろう。

折れて落ちてきた避雷針で串刺しになる神父や、スライドするガラスでジェニングスの首が”チョンパ”される場面は、あまりにも印象的で、「エクソシスト」の首グルグル一回転やブリッジ早歩きなど突拍子もない演出と比べて、リアリティを伴う凄惨な表現が特徴になっている。

ダミアンが大統領の養子になっちゃうんだから、まあ、社会不安もそうだが現代の陰謀論にも繋がるメタファー演出で分かりやすい。
ただ、話が大きくなりすぎて大丈夫!?みたいなところは当時もあったんじゃないかと思う。

こうしたホラー映画の傑作は社会不安をどのように恐怖に置き換えているのか考えるのも楽しみ方の一つだ。気になる人は是非😁

ところで、毎日新聞オンラインの余談ついでなんだけれども、日本の「コックリさん」はあちらの「ウィジャボード」と同じようなものとして知られているみたいだが、「金縛り」も実は万国共通で、世界に100以上の言葉があるのだそうだ。

英語圏の一部では「オールド・ハグ」、カリブ海のセントルシアでは「コック・マー」と呼ばれていていずれも霊が現れると言われているらしい😱
ワンコ

ワンコ