ぺっこり180度

サイダーハウス・ルールのぺっこり180度のレビュー・感想・評価

サイダーハウス・ルール(1999年製作の映画)
3.7
もはやアメリカ映画のひとつのジャンルと言える
「古き良き片田舎のアメリカの空気」をまといにまとった作品。
(スタンドバイミーとか、リバーランズスルーイットとか、同監督のギルバート・グレイプ辺りを真っ先にこのカテゴリに入れたい。)

孤児院で生まれ育った青年ホーマーの成長譚。
…なのだけれども、ホーマーはもともとずいぶん「成熟した人格」を持った青年と感じる。
故に成長譚なのに成長のふり幅が狭いという難点があるが、終始安心して映画を見る事はできる。

周囲を取り巻く登場人物たちも、
それぞれ人間らしさ(欠点)はあるが基本的に良心的で安心感。

ただしローズ(父)には違和感が残る。
絶対的に「それは駄目」な所業が横たわるため、
それ以外のシーンでどんなに良い事っぽい事を言われても全然入ってこない。作り手は彼をどうしたかったんだろう。

また、主人公の周りに生じる数々の問題(孤児と中絶とか、人種問題とか、文書偽造?!とか、依存症とか、DVとか、二股とか、色々)は
それぞれが重く複雑なテーマなので、全体としては散らかしてそのままになった感が残るが、これは原作あり作品の運命と目をつむるのが正解だろうか。

とはいえラストシーンの伏線回収は小気味よいし、
子どもたちは生き生きとしているし、
マイケル・ケイン氏は素敵だし
シャーリーズ・セロン氏の美しさに圧倒されるし
看護婦エドナ役でジェーン・アレクサンダー氏が観られて嬉しいし
地味に充実感のある映画。

蛇足だけどジェーン・アレクサンダー氏を観ると草笛光子さんを思い出す私。