TP

8 1/2のTPのレビュー・感想・評価

8 1/2(1963年製作の映画)
4.7
★1991年に続き2回目の鑑賞★

 本作はフェリーニの自伝的要素も強い作品と言われている。
 現実と妄想の世界を行き来しつつ自身の精神的内面を深掘りするという、その後かなり製作されるそのような内容の作品群は、得てして独りよがりで映像や風景での表現が長くて冗長な内容になりがちなのだが、本作はまるで違う。
 短いエピソードの重ね合わせでテンポよく進行していくとともに、それぞれに使われる役者を中心としつつも画角・風景構成やニーノ・ロータの音楽などにより強烈な印象を残す場面が幾重にも重なっていくという、内容的に非常に贅沢な映画。

 とにかく、本作は人だらけ。温泉地に行っても撮影現場に行っても主人公の映画監督グイドの周りには人が密集し、その風景が記憶に刻まれるとともに、セリフがあって何度も場面が与えられる役者は30人くらいいると思うが、そのすべてがインパクトがあって役としての魅力が発散していて印象に残るというまさに奇跡的な映画。
 特にマストロヤンニは間違いなく二枚目なのだが、本作では茶目っ気もしゃれっ気もある独特な魅力を持つ人物を完璧に演じていて、こういう空気を生み出せる役者はハリウッドには到底居ない。

 軽妙、不思議なストーリー展開でありながら、ラストの「人生はお祭りだ。過去を清算するのではなく一緒に生きていこう」という主張と、出演者全員による大団円の場面では、思いもかけず突如感動の波が押し寄せ、これは凄い映画だと鳥肌が立つほど。
 この場面は後にいろいろな映画でオマージュされるが、ラストに至る過程が完璧な本作を超えられる作品など存在しないと断言してしまう。
 ウディ・アレン、スコセッシ、タルコフスキー、ポランスキー、ロッセリーニ、イングマール・ベルイマンなどなどの名匠がベスト映画として挙げているというのも納得の名作。

 学生時代は良く観たイタリアの名作群は、会社員になってからはその泥臭い内容により正直、避ける傾向にあったし、今回も上半期で期限が切れるチケットの消費という気持ちから鑑賞したのだが、いやいや、やっぱり名作は名作ですよ。
 31年前の鑑賞時の評価は4だったが、それを軽く超えてくる評価となり、昔のヨーロッパの名作を観返してみようという動機にもなりえる今回の鑑賞でした。
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