ブラックユーモアホフマン

スパイダーマンのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

スパイダーマン(2002年製作の映画)
4.8
傑作だ……。

公開当時、ガキの僕にはまだ早かった。その後も何度もテレビ放送されて、そのたびになんとなくは見てたからもちろん内容は分かってたけど真面目にちゃんと観たのは初めて。これは大人向けだ。苦い話だし。
そのことを当時から感じてたんだと思う。だからあまり当時はのめり込んで観られなかったんだろう。

それに、スパイダーマンは言わば狼男みたいな動物人間系で、グリーンゴブリンはジキル博士とハイド氏みたいな二重人格系(もしかしてノーマンって名前、『サイコ』を意識してる?)で、実はクラシックなモンスター映画の要素も取り入れた話だと思うんだけど、そこも子供ながらにちょっと怖かったんだと思う。我ながら子供ってそういうの敏感に察知するもんだなーと思った。

公開当時、この映画を十分に楽しめるだけの年齢だったら良かったのにな、とも思うけど、子供と大人の感じ方の差を実感できたのは凄く良い体験だった。

平成ライダーシリーズ的なシリアスさを感じる。僕はガキらしいガキだったので平成ライダー(クウガから555くらいまで見てた)にも当時ハマらず、戦隊シリーズの方が好きだった。

良い意味で古臭い。キャラクターも映像の質感も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とかを想起させるので、80年代アメリカ映画的なものを2002年なのにやってる、みたいな感じだろうか。

いや『マトリックス』があって『ロード・オブ・ザ・リング』があって『スター・ウォーズ』新三部作があって『パイレーツ・オブ・カリビアン』があって『ハリー・ポッター』があって、みたいな中でCG全盛になっていく直前の過渡期で、古さと新しさが混合していて、後から見ると結果的に1番いい時期だったのかもしれない。

ダニー・エルフマンが音楽をやっているから、ティム・バートンの『バットマン』っぽい雰囲気もある。それもまたいい。オズコープ社の外観のバカっぽさとか最高。ニコルソンジョーカーが脱色されちゃう工場とかにも似てるような。
NYの裏路地のセット感とかも、ああ〜映画を見ているなあ!!という感じがするのよね。

ピーター・パーカーのキャラクターは『卒業』のダスティン・ホフマンみたいだな、とか。だからニューシネマ以降の主人公像って感じもする。

何より話が超面白いっていうのは、スタン・リーの功績だな。すごいわ。でもそれをサム・ライミが最も正しく映画化したのだと思う。
何より2時間の中にこれだけの展開を詰め込んで全く無理がないっていうのがすごい。冒頭からいきなりもう蜘蛛に噛まれて、パワーに目覚めていくのも早いし、人物関係を示すのも端的で上手い。過不足なく、余計なことをしないから早い。必要なエッセンスを的確に描写してる。

そしてキャスティングが完璧。MJ役のキルステン・ダンストが絶世の美女だって子供の頃は全然理解できなかったんだけど、大人になって完全に理解できる。完璧なMJだ。
全員完璧。ウィレム・デフォーって本当に素晴らしい俳優だな。ますます好きになる。そして何といってもJ・ジョナ・ジェイムソン役のJ・K・シモンズよ。最高のキャラだな。そりゃMCUにも出したくなるよ。

こんなに完璧なオリジンがあるのだからやはり『アメイジング・スパイダーマン』は無謀なことをしていたなと思う(映画として嫌いじゃないけど)し、MCUスパイダーマンは賢かったなと思う。
キャラの再解釈が上手いよなー。地味に一番好きな改変はフラッシュ・トンプソンw MCU版のトニー・レヴォロリは愛せるキャラになっててそれもいいよな。(てかこっちのフラッシュ、ジョー・マンガニエロだったんかい!!笑)

若いジェームズ・フランコも完璧なハリー・オズボーンでとてもいい。そしてMCU版ハリーにティモシー・シャラメっていうゼンデイヤの提案は大賛成。このフランコ、完全に『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のシャラメと被るもの。金持ちの息子で女性関係に悩んでる感じが。ちなみに若草物語でシャラメの父親役だったクリス・クーパーは『アメイジング』の方のノーマン・オズボーン役だったな!
フランコとデイン・デハーンにはジェームズ・ディーンを演じたことがあるという共通点もある。シャラメがディーンを演じるようなことがあれば完璧。

【一番好きなシーン】
火事のシーンでおばあちゃんのフリしておびきよせるグリーンゴブリン。可愛い。