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タンゴ・イン・ブエノスアイレス-抱擁-のodyssのレビュー・感想・評価

3.2
【ドキュメンタリーの作り方】

ブエノスアイレスでのタンゴ・フェスティバルの模様を描いたドキュメンタリーです。

ミュージシャンたちの表情や、タンゴという音楽ジャンルについての各人の捉え方、コンテストでの踊りなどなど、興味深い映像と音楽が次々と出てきます。

今現在、日本でタンゴを含むラテン音楽がどの程度の重みを持っているのか、私はよく知りません。私が学生だった頃には(1970年代)まだNHK・FMでの夜のメイン枠で、ラテン音楽はポピュラーおよびジャズと並んで三大ジャンルの一つとして扱われていました。

今は音楽ジャンルも多様化していますから、ラテンの占める割合が相対的に低下するのは仕方のないことなのかも知れません。しかし洗練よりも人の心に直接的に訴えることに重きを置いているような趣きを持つラテン音楽は、本来的には日本人にも受け入れられやすいはずです。

偉そうなことを書きましたが、私もタンゴのディスクはほんの少ししか持っていませんし、詳しいわけでは全然ありません。でも、この映画を見ると、もっとラテン音楽を聴いてみたいという気持ちになること請け合いです。

ただし、ドキュメンタリー映画として見た場合、出来がいいと言うにはちょっとためらいがあります。これは、ドキュメンタリーというものの作り方についての、日本とあちらの姿勢の違いからかも知れません。日本人なら、ドキュメンタリーである以上、単に映像や音を並べるだけではなく、そこに呈示されているイベントや人物について客観的なデータを与えなければと考えるわけですが、あちらでは必ずしもそうは考えないらしい。分からせるより感じさせる、というコンセプトなのかもしれませんが、こちらからすると或る程度の背景だとかデータが分からないと感動だってできない場合があるじゃないか、と言いたくなります。ラテン音楽に興味を持つきっかけ、としてなら悪くないと思うのですが。
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