まいこ

晩春のまいこのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.0
小津安二郎監督が広津和郎の小説「父と娘」を原作に父娘の絆を描いた名作ホームドラマ。
大学教授の周吉は早くに妻に先立たれ、娘の紀子と2人きりで鎌倉に住んでいる。いまだに独身の紀子を心配する周吉だったが、周吉の妹まさが縁談を勧めても紀子は頑なに受け入れようとしない。周吉はそんな紀子に、自分も再婚を考えていると告げる。

小津監督が娘の結婚や親の孤独を題材にした初めての作品で、その後の小津作品の作風を決定づけた。原節子が紀子役を演じる「紀子3部作」の第1作にして、原が初めて出演した小津作品でもある。小津監督が野田高梧と共同で脚色も手がけた。

親離れに至るまでを楽しむもよし、親と子のどちらかの視点で感情移入するもよしな言わずと知れた名作。24で嫁入りが遅いと言われる世界があったことを思うとすっかり今は晩婚化が進んでることを身に染みて感じた。
鑑賞していくうちに終始まとわりつく"ファザコン"という言葉。その一言で片付けることも可能かもしれないが個人的には簡単にそう言い切れないような気もするし…。ともかく、ストーリーで嫌悪感を抱くほどではない。
なかでも特に気に入ったのは会話劇。情報を映像から吸収しがちで言語的な面白さを享受することが難しい部類の人間が笑えたというマジカル。
同じ言葉を数回繰り返す会話のテンポは実生活だとかなりストレスなのだが、小津作品になると原節子の表情の豊かさも相まって途端に愛おしくなる。

GHQ支配下ということもあり、結婚→嫁入りと政治を重ねてみるという興味深いレビューも拝見したが、それを考慮せずともシンプルに面白いと思える作品だった。昔から結婚は墓場、顔から上半分は似てる、みたいな言葉回しあったんだな。


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その人ね、ゲイリー・クーパー似てるっていうんだけど 「良かったじゃない、あんた昔から好きだったじゃない」 でもね、うちにくる電気屋さんに似てると思うの 「その電気屋さん、クーパーに似てる?」 うん、とても似てるわ 「じゃあ、あんたそれ、彼も似てるってことじゃないの」👈それはそう🤣

熊太郎なんて名前いやよ、もじゃもじゃしてるじゃない 私なんて呼んだらいいの、熊太郎さんなんて山賊みたいだし、だからってくまちゃんとも呼べないわ 「うーん、でもなんとか呼ばないと」 だから私、くーちゃんって呼ぼうと思って 「くーちゃん?」 うん、どう? 👈🤣🤣🤣
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