あんじょーら

晩春のあんじょーらのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.1
終戦直後の鎌倉にある早くに妻を亡くした父親(笠 智衆)と娘(原 節子)の親子2人家族の、娘の結婚をめぐる物語です。ストーリィはいたって単純と言ってよいと思います。淡々と描かれる鎌倉とその周辺の景色、鶴岡八幡宮、海岸、どれもモノクロであるのに、とても美しく映えます。


なんと言っても、やはり原 節子の存在感は凄い。お嬢様ではないけれど、慎ましく清楚で、しかし幻想ではない女性像として素晴らしいと思います。また、笠 智衆が凄くいい。猫背の背中も、笑いかける笑顔も、帰宅した後に洋服から和服に着替える際のネクタイやシャツの脱ぎ散らかしさ、もちろん演出されているのでしょうけれど素晴らしく人間味あり、良いです。単純に言いたくないけれど「古き良き日本」を感じられます。また当然なんでしょうけれど、杉村春子がまた上手い。父親の妹役なのですが、これがとても良い味が出ています。いわゆるオバサンなのですが、決して下品でない、しかも茶目っ気があり、可愛らしい、とさえ言えるおばちゃん、それを普通に見せてくれます。

ラストシーンのりんごの皮を剥く音と、うなだれる父のローアングルのバックショット、素晴らしかったです。

ユーモアあり、人情ありの、ホームドラマの名作。再見でしたが、やはり凄く良い映画でした。