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ベニスに死すのPowのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
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アーティスティックな感性を持つ男の徹底的な行き場の無い孤独。

この映画は第三者的な孤独感を非常に巧く撮っているな、と感じます。
例えばレストランや酒場など賑やかな場所に誰かと一緒に居る時に、相手方がトイレに立った時など。
その時にふっと訪れるもの。
そこらかしこに人はいて賑やかではあるんだけど、誰ともコネクトしていない状態の第三者的な孤独。

そういった状況で辺りを何気なーく見渡す感じとかが非常に巧く撮られていて、その孤独な個人や場の空気に臨場感があり、強く没入させる所があります。

セリフもわりと長めに省かれていたりして、その効果を高めている。終始、匿名性の高い第三者的な孤独感のフレームの中で進行していくので、圧倒的な孤独と、患った恋心、そして報われることなく迎えるラストが人間がまさに求め続けることの本質を垣間見せます。

人間は例え衣服住に満たされても、それが無きゃあ死んだも同然なのだと痛感する切なさや儚さ。非常にメッセージ性のある良いヒューマンドラマです。
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