なんだか蜃気楼みたいな映画だった。
持病を抱えた老作曲家がベニスに静養に行った際、観光に来ていた美少年に心を奪われるという物語。
基本的にセリフは少なく、ゆったりとしたストーリー展開。
途中何度か回想なのか、現在進行形なのか、主人公の妄想なのかわかりにくいシーンがあった。
老いて死にゆく人間の見る幻なんじゃないかと思ったりした。
全体的に、旅に行った時にふと感じる侘しさ的なエッセンスが溢れている。
旅愁と言うべきか、旅先で感じる煩わしさなどがつぶさに描かれている。
終盤なぜ老人は、理容室で奇妙な化粧を施されたのだろう。
見方によっては道化に見えなくもない(作品内で道化のようなキャラクターは何人か出てくる)。
まさか「恋する乙女」の印でもないだろう。
シーンの中で一応、若作りのためというような説明がされているが、よくわからない。
老人が最後死に向かうとき、化粧なのか病気のせいなのか、とにかく顔色の悪さが際立った。
次第に醜くなる老人と、自分の美をもてあます少年。
それは、生と死の対比を思わせる。
音楽がよかった。
儚く、それでいてどこか天国を思わせるような調べ。 作品の中で、圧倒的な存在感をもっていた。