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花の生涯〜梅蘭芳(メイ ラン ファン)〜のpeplumのレビュー・感想・評価

4.2
日中交流40周年記念チェン・カイコー特集@角川シネマ新宿にて。

『さらば、我が愛/覇王別姫』を見ぬまま京劇を扱った作品を見るのは気が引けたが見れてよかった。とても面白い。
実在の京劇俳優、梅蘭芳の一生を通して描かれる芸道の孤独と悲しいほどの美しさ。
冒頭に現れる「紙の首枷」がすべてを象徴している。軽くて破れやすいものを破ってはならないという無理を通すのが芝居者の本道という残酷さ。ちょっとしたロマンスもまた芸の肥やしにする前に打ち捨てられる。
袁世凱から日本軍まで中国の為政者の変化の中でも頂点に君臨し続けた京劇の孤高と苦悩を一身に背負う梅蘭芳のその肩幅の儚さよ。
衣装や美術が映画であることを辞めて世界に迷い込ませるので軽く引く。特に女性のいわゆるチャイナドレスの紋様が多彩で僕も着てみたくなった。襟が独特ですな。
六平さん演じる日本陸軍の将校に「女の腐ったような女々しいやつ」となじられた女形の梅蘭芳が「舞台を降りたら一人の男だと思ってほしい」と答えるシーンが妙に切なくて、素敵だった。

森本薫の『女の一生』の布引けいに感じる辛みと同じものがあった。
本当に美しい映画だった。
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