よしみつ

遠い空の向こうにのよしみつのレビュー・感想・評価

遠い空の向こうに(1999年製作の映画)
4.4
ロケットロードは寄り道をしない。後戻りもしない。ただ、一直線に宇宙へ伸びる道...『宇宙兄弟』より

僕も小学生の時、ロケットや宇宙に想いを馳せていた。毎晩のように望遠鏡で空を眺め、週末は天文台にも通った。天文宇宙検定まで持っている。そして、学校の友達とロケットを飛ばそうと計画まで練った。この映画は、僕の憧れていた日々そのもの。最高の青春映画だった。

※宇宙開発史について知っておくと理解が深まります。
【スプートニク1号が与えた衝撃】
原題:October Sky(十月の空)
1957年10月4日に、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた。ソ連に先を越されたアメリカでは、スプートニクショックと名前が着くほど衝撃が走ったそうだ。具体的にスプートニクショックが与えた影響は様々だが、最も大きかったのはアメリカの教育プログラムだ。 科学技術の振興が重要だということに気づいたアメリカ政府は高校や大学でより基礎学力、特に数学・物理などに理系強化を行い教育プログラムを見直した。また、あの有名なNASA(アメリカ航空宇宙局)が設立され、集中的に予算を投じたのもこの時期からである。

【フォン・ブランウン博士とは?】
若きジェイク・ギレンホールが演じる主人公のホーマーが憧れを抱いている人物がフォン・ブランウンだ。
フォン・ブランウンはドイツからアメリカに亡命してきた科学者で、ソ連のセルゲイ・コロリョフと共に米ソの宇宙開発競争の代名詞的な人物である。アポロ計画では、サターンVロケットを開発し、1967年に打ち上げに成功。そして1969年7月20日人類初の月面到達に成功した。
「米宇宙開発の父」と呼ばている。

映画について話を戻すが、1957年のスプートニクショックから始まった米ソ宇宙開発競争について勉強になる映画ではある。しかし、この映画で描かれるのは家族や人生だ。これは、ロケットに憧れる男の青春映画である。
ロケットは、空高く真っ直ぐ飛んで行く。ホーマーたちがロケットを飛ばしていく過程、夢を目指し真っ直ぐ生きる彼らにとても感動した。

(以下、若干のネタバレ考察👇)





























『主人公のホーマーは何故、憧れのフォン・ブランウンに気がつかなかったのか?』

ホーマーは全米の科学コンテストで優勝した後、大勢の拍手の中でフォン・ブランウンに出会ったが、彼は全く気がつかなかった。サイン付きの写真まで持っているのに...
あくまでも個人的な考察です。

彼にとってのヒーローは、フォン・ブラウンではなく父親だったのではないだろうか?
父親と衝突したこともあったが、父親なしでは成功しなかった。誰よりも早く父親に報告したい、という想いでいっぱいだったのだろう。
憧れのヒーロー、認めてもらいたいヒーローはフォン・ブランウンではなく、父親だったのではないか?

だからこそ、父親と見るロケットの打ち上げ、空高く伸びたロケットロードにはとてつもないカタルシスがあるのだ。本当に素晴らしい青春映画だった。
よしみつ

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