半兵衛

銀座カンカン娘の半兵衛のレビュー・感想・評価

銀座カンカン娘(1949年製作の映画)
4.0
アイドル的な人気を誇っていた時代の高峰秀子の明朗な魅力と島耕二監督のモダニズムで軽快な演出が見事に合わさり、他愛のない内容なのに見ていて明るい気分になれる元気の出る作品に。テクニックやテーマなど小難しいことを気にせず、スクリーンでただただ出てくる役者さんの溌剌としたオーラや演技を堪能できるというのも映画の妙味なんだと改めて再確認。

島監督のほかにも脚本に戦前東宝でモダンな映画を多数監督した山本嘉次郎、美術に日本におけるグラフィック・デザイナーの第一人者としても著名な河野鷹思が参加しておりモダンな雰囲気を一層高める。なかでも河野設計による簡潔ながらも風船や照明など小道具の工夫された置き方でアーティスティックな趣に満ちたバーのセットが素晴らしい。

流しをしていた灰田勝彦と酔っ払いが外で喧嘩する場面でダナ・アンドリュース出演の『鉄のカーテン』の看板型ポスター(しかも英語版)をバックに配置するセンスがかっこいい。

高峰秀子と一緒に同棲している友人の笠置シヅ子、その家主の息子灰田勝彦による歌も馬鹿馬鹿しい歌詞ばかりなのに陽性なドラマの雰囲気にびったりで楽しくなり、見終わったあと思わず口ずさんでしまう。主題歌の『銀座カンカン娘』も誰でも覚えやすい歌詞と耳障りのいいメロディで印象に残る。

でもそんな当時最新のヒットソングがメインのお話に落語を組み合わせるスタッフのセンスが一番凄いかも、家主を演じる五代目古今亭志ん生師匠による『替り目』と高峰秀子と灰田勝彦の状況を重ね合わせ、おまけに『銀座カンカン娘』まで流して祝福する情報量が多いのにも関わらず訪れる多幸感は監督が天才だから出来るのか一流のスタッフによる歌と落語だからなし得た奇跡なのか。少なくとも他の落語映画ではこんな体験はしたことはない。

エンドロール後の演出が粋、これは劇場で鑑賞して味わってほしいかも。
半兵衛

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