柏エシディシ

群衆の柏エシディシのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
3.0
ヒューマニスト、楽天主義のフランクキャプラがこういう映画も撮っていたとは少し意外。
やはり巨匠は巨匠なんだな。一筋縄ではいかない。

本作ではキャプラらしいユーモアやコメディシーンはもちろんあるのだけれど、民衆の結束と紙一重の迎合主義の危険性を鋭く描いている。
集会でジョン・ドゥが激しく罵倒されるシーンは戦前のザラついたモノクロの画面も相まって、恐怖感が否応に増す。
市井の人々の良心や絆を一貫して描いてきたキャプラはこういう目線もしっかり持ち合わせていたのだ。

其処からの、やや着地に苦慮した様に見受けられる終幕はキャプラらしい「ハッピーエンド」ではあるのだけれど、やはりぎこちなさは否めない。

本作を観た後だと、楽天主義の最高峰たる「素晴らしきかな哉、人生!」もキャプラの過剰なセンチメンタリズムが現実逃避的な危ういバランスの上に成り立っていたんだと判る。
「せめてクリスマスイブには、、」という台詞が「群衆」にはあるけれど、毎年あの映画を観ることが慣例であるという彼の国が孕む危うさを思う。

素直で少し愚かな主人公ジョン・ドゥを好感の持てる男として演じる事が出来るゲイリー・クーパーは見事な演技。
キャプラの所謂「キャプラスク」を嗤う人にこそ観て欲しい一本。
柏エシディシ

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