Maoryu002

失はれた地平線のMaoryu002のレビュー・感想・評価

失はれた地平線(1937年製作の映画)
3.4
戦争の混乱にあるアジアの町から西洋人を避難させる任務に就いていたコンウェイは、弟を含む4人とともに飛行機で町を脱出するが、その飛行機は何者かに乗っ取られ燃料切れで墜落する。極寒の雪山から助け出されたコンウェイたちが連れていかれたのは、温暖な気候の中で豊かな土地と文明を築く理想郷だった。

非常に映画化が難しい物語だったと思う。
下手すると楽観的理想論というか、現実に目をつぶった独りよがりな思想の押し付け映画になってしまうような気がする。
それを名匠フランク・キャプラ監督は、やや曖昧さを残しつつ、冒険物語を織り交ぜてキャプラ的な娯楽性を持った映画にしている。

それにしても、「信念は節度で行き過ぎを慎むことが美徳」「美徳自体も行き過ぎは禁物」「わずかな思いやりで難問も解決する」という、まさに理想的だが性善説に頼ったシャングリラの考え方は、見ていてなんだかムズムズしてくる。
もちろん素晴らしいとは思うが、欲望や暴力で世界が滅びた後にシャングリラの人々が世界を生き返らせるという考え方からもわかるように、排他的で自己中心的にならざるを得ない考え方なのだ。

そんなに豊かで、なぜ周りから攻め込まれないのか、とか疑問は絶えないけれど、この映画はそこは重要じゃないんだろう。
人々を永遠に魅了する世界観の中に生きる人々を是とするか否か、観る人、観る時によって変わっていくように感じた。
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