みおこし

失はれた地平線のみおこしのレビュー・感想・評価

失はれた地平線(1937年製作の映画)
3.6
1930年代に制作されたとは思えない、ベストセラー小説のフランク・キャプラ監督によるSF小説の映画化。

1931年、アフガニスタンのパスクルから白人を逃がす手助けをしていたイギリス人のコンウェイ。政府手配の小型機に乗り込むも、実は操縦士は本来の担当ではなく、目的地ペシャワールではなくチベットの奥地に不時着。着地の際に飛行機は事故を起こし、命からがら抜け出したコンウェイたちの前に中国人の一行が駆け付け、彼らの僧院に案内されるが…。

いわゆる”シャングリラ”(理想郷)という言葉が初めて使われた作品とのこと。コンウェイたちが訪れた僧院では、250歳になる老僧のもとで人々は幸福に暮らしています。徹底的に秩序が保たれた理想郷での暮らしに誰もが夢を抱きますが、その一方で実は問題も抱えており…と先が読めない展開に終始ハラハラ。いつの世も人々はシャングリラを求め続けるも、その過程で対立が生じ、紛争が起きてしまう…。今を生きる私たちにとっても耳が痛い、永遠のテーマです。
ロナルド・コールマン扮するコンウェイはじめ、それぞれの価値観やシャングリラに対する思いが浮き彫りになっていく人間ドラマの描き方は、さすがの名匠キャプラ作品…!!

時代背景もあってか、戦争について批判しているシーンなどが戦時中にカットになったりしたそうで、1970年代になってAFIがフィルムの修復に乗り出したとのこと。確かに映画を観てみると、時折静止画のシーンが登場。映画を観るにあたってはストーリーの進みなど違和感が生じるわけではないのですが、あまり体験したことがなかったので新鮮でした!
私たちが古い映画を難なく観られている背景に、膨大な数のフィルムを収集・修復する地道な作業もあるのだなと何だか勉強になりました。

本作のミュージカル版が1973年にコロンビア映画から公開され、歴史的な大コケをしてしまったせいで、いわゆる豪華なミュージカル映画がほとんど制作されなくなったという、長年のハリウッドの映画史にとっては特筆すべき事件があったそうなのですが、そのミュージカル版をいつかどうしても観たい…!!
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