Eyesworth

スティングのEyesworthのレビュー・感想・評価

スティング(1973年製作の映画)
5.0
【カモの100倍返しコンゲーム】

ジョージ・ロイ・ヒル監督、ロバート・レッドフォード&ポール・ニューマン主演の痛快コンゲーム・コメディの原点にして頂点。

〈あらすじ〉
舞台は1936年のアメリカ・シカゴの下町。詐欺をして日銭を稼いでいるジョニー・フッカー(ロバート・レッドフォード)は、詐欺の師匠でもあるルーザーと組んで、通りがかりの男から財布をだまし取る。財布には信じ難い大金が入っており、ギャング大物ロネガン(ロバート・ショウ)の売上金だと発覚。当事者のルーザーは殺され、フッカーは彼に紹介された伝説の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフ(ポール・ニューマン)を訪ねてシカゴに向かう。そこで彼は師匠の仇討ちに、ロネガンをだまして大金を巻き上げることを提案。過去に詐欺に失敗して逃亡生活を余儀なくされた経験を持つゴンドーフだったが、フッカーと共に競馬の吊り店(The Wire)を使った大がかりな詐欺を計画し、一流の詐欺師仲間を大勢集めてロネガンから大金を巻き上げる計画を練るが…。

〈所感〉
この映画は出だしから誰もが聞き馴染みのあるスコット・ジョプリンの『The Entertainer』というピアノのためのラグタイムが流れるので、舞台である不景気だがエネルギーと野心に満ちた1936年のアメリカに気軽に入り込める。この作品は物語形式で、6つのプロットに分かれており「The Set-up(下ごしらえ)」から幕が上がり、「The hook(ひっかけ)」「The Tale(シナリオ)」「The Wire(吊り店)」「The Shut-Out(しめ出し)」と続き、オチの「The Sting(最後にぐっさり)」ですべての引っ掛けが回収される仕組みになっている。今の映画にはあまり見られないシンプルな順序の構成と内容の緻密さも相俟って作品としてのクオリティが非常に高い作品だと思った。作中には至る所に予測できないトリックが仕掛けられており、我々視聴者はそれに乗り、登場人物同様に騙されながら次の展開へと進む。そのため、自分もカモにされているような不愉快感と「なるほど!やられた〜」という爽快感が共存し、ライアーゲームのような面白さとなっている。マジックのタネとしてウソの賭博場を作ってしまうのだから大掛かりな仕掛けであり、とても現実で真似できるものではないが、多くの人員を駆使した協働の巧妙な詐欺を働く作中の人物の手法は非常に人間心理の勉強になる。人を信用するのは簡単だが、人を騙すにはある程度の人員と時間とタネが必要になるのだ。あの展開であのオチは全く予想していなかったし、それはラストに辿り着くまでに多くのミスリードがあったからだろう。1回見ただけでは釈然としないが、2回目3回目見たらまた新たなトリックに気づきそう。シルクハットから鳩ではなく、銃やナイフが飛び出してくるようなコンゲームの面白さに半世紀経った今でもあっぱれ!と言いたくなる。1974年のアカデミー賞で『ゴッドファーザー』シリーズに挟まれて受賞しただけある。ロバート・レッドフォードはブラピ並にイケメンすぎるし、ポール・ニューマンはマーロン・ブランド並に渋すぎる。この時代の俳優陣は圧倒的に華がある。
Eyesworth

Eyesworth