Tully

スティングのTullyのレビュー・感想・評価

スティング(1973年製作の映画)
5.0
物語は1930年代、大恐慌時代のアメリカ。詐欺の仲間を殺したギャングのボスに復讐するために、若い詐欺師ジョニー・フッカーは伝説の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフの協力を求める。このふたりの詐欺師に扮したのが当時大スター街道まっしぐらのロバート・レッドフォードとすでに大スターの座にあったポール・ニューマン。このふたりにとって『明日に向って撃て!』に次ぐ共演となった。実は監督のジョージ・ロイ・ヒルも含めて3人の再共演であったわけだ。復讐というと血生臭い内容を想像するが、彼らの復讐は違う。詐欺という自分たちの戦場でもって天下のギャングから大金を巻き上げるというもの。詐欺という犯罪がギャングという更なる大犯罪者に向けられると全く別の意味合いになってしまう。とにかくそのぎゃふんといわせるまでのあれこれの仕掛けが、綿密に組み立てられた脚本で描かれてゆく。しかもそこにはさらに観客までも騙すという、複雑なトリックが用意されている。映画はノスタルジックな雰囲気で彩られている。当時の時代色を音楽、美術などで精密に再現していて、ただならぬ作りだ。トリックの一番の奥の手を隠して観客までも騙す映画の手法を「ポーカー・フェース・ゲーム」と呼ぶそうだ。その後も観客騙しの映画はいくつかあるし、それなりに面白い作品もある。しかし本作ほどに見事でスマートに騙しきる作品というのはまずない。制作されてすでに36年が経過していまだ現れていないというのでは、もしかしたら二度と現れないのかも知れない。私はこの映画のように面白い作品に出会おうと思いつつ、映画にのめりこんでいった。その点でも忘れられない映画である。
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