Takuma

血は渇いてるのTakumaのレビュー・感想・評価

血は渇いてる(1960年製作の映画)
4.0
主人公・木口は、広告会社の過剰なセンセーショナリズム最大の犠牲者といえる。
偶然、この前に観た「セルピコ」は
純粋な主人公が周囲の多種多様な薄汚れた人間たちにより振り回され、悲劇に見舞われるという点で共通していました。
マネージャー野中や暴露屋の原田だけでなく、
妻や金井、保険会社のゴーサイン、週刊誌、一人歩きした偶像を作り出した世間
彼を取り巻く全てが彼を変えてしまった。
このストーリーを最後まで追って気付いたのは、自分とて例外では無く、当事件の渦中にいた一人だったのかもしれない、という事。
実際この物語の象徴ともいえる、彼が物憂げな表情で自らのこめかみに銃を突きつけている画、
この衝撃的な画に惹かれたのがきっかけで視聴しているのです。
その点では、フィクションながら彼をCMタレントとして起用したマネージャー野中の手腕は見事だったと言わざるを得ない。
訴求効果、というか、見る側に何かしら働きかる力を持つ一枚だ。

強烈な皮肉が込められた、社会に一石を投じる隠れた名作かも
流石に時間経過と共に風化していく部分があるかとも思いましたが、SNSの台頭により、更に深いメッセージ性と新鮮なリアリティを獲得した模様。
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