SI

東京上空いらっしゃいませのSIのレビュー・感想・評価

東京上空いらっしゃいませ(1990年製作の映画)
-
2022.4.6
自宅TVにて鑑賞

♪「帰れない二人」-井上陽水
若手キャンペーンガールの付き人である主人公は、枕営業の末に不慮の事故死で成仏できず幽霊となった彼女と出会う。彼女を追って彼女と初めて向き合った主人公は、彼女が満足できるように行動するようになり、彼女は土壇場で枕営業相手の前に姿を現し強制消滅の危機に陥るが、なんとか逃げ出し主人公は彼女にキスを、彼女は成仏する。

相米慎二監督。
ホンが破綻しており、正直途中で観ることを後悔したが、終盤の1シーンで心が震えて泣いた。これぞ映画。凄まじい。
主人公とヒロインが何をしたいのか分からないので、葛藤や苦悩が中盤でうまく表現されておらず、ボケている。クライマックスの付け方もヒロインの突発的な行動によるものであり、首をかしげる構成。
突然主人公がヒロインにキスするのも、面食らった。それが青春の成就だということであっても、付き人にキスされるのはどうなのか。

相米節の長回しはそれまで何度かあったとは思うが、終盤のジャズダンス歌唱シーンで、全てが吹き飛んだ。井上陽水「帰れない二人」。牧瀬里穂ののびやかで体当たりな歌声もダンスも、ライブ感あるエキストラも、中井貴一の哀愁漂うサックスも、全てが良すぎて、自然と泣けてしまった。こんなに悲しいジャズがあるのか。しかし、これがジャズなのだろう。
ホンの破綻など全てを覆す、圧倒的な映像の力。このワンシーンを撮れるのは、相米慎二しかいない。だから彼は、神なのだと思う。

牧瀬里穂については、功罪あった。しかし、あのジャズシーンだけは、彼女は生きていた。
鶴瓶は出涸らし。だが仕方ない。

あのワンシーンは、永遠に忘れないと思います。これぞ映画。
SI

SI