SEULLECINEMA

東京上空いらっしゃいませのSEULLECINEMAのレビュー・感想・評価

東京上空いらっしゃいませ(1990年製作の映画)
5.0
常に引っ張り合いをしている牧瀬里穂とあてもなくオロオロする中井貴一。一見すれば中井貴一の方が幽霊的であり、牧瀬里穂の方が人間らしい。安定した直線の運動と不安定な回転の運動。ただオロオロと周りを彷徨うだけの中井貴一が直線的な運動を決意した瞬間、牧瀬里穂は雨とともに真の自由を獲得してしまう。相米慎二の主題系においては雨が降ることは少女が自由を獲得することにつながる。
牧瀬里穂が上空へ旅立つとともに、中井貴一もまた梯子を上へと引き上げる。そして画面を超越する存在として音だけが彼らを繋いでいる。

まあ、そんなことはどうでもいい。些末な、取るに足らないことだ。

「帰れない2人」の奇跡的な長回しを観て、ただ、泣けばいい。ただ茫然として、泣けばいい。何も考えず、思う存分泣けばいい。
SEULLECINEMA

SEULLECINEMA