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人のセックスを笑うなのすごいものレビュー・感想・評価

人のセックスを笑うな(2007年製作の映画)
4.7
流動的な大人と滞る子供たち



美大生の松山ケンイチは教員の永作(博美)さんに恋をした。39歳。今でも可愛いのに10年前の永作さんなんて余裕なのである。眉間にシワを寄せながらタバコを吸っている永作さんがとってもいいのである。

結婚して一緒に歳をとりながら生活することを考えると恋人、あるいは夫婦の時間は膨大だ。たくさんの時間の中でお互いのことを「すき」だと思う瞬間もきっといっぱいある。それは学校や会社みたいに「何月何日にこのイベントをして」「何月何日までにこれを終わらせて」って感じでキッチリとタイミングを作ってやるもんでもなくて。ふと「すきかも」みたいな感情が湧き上がってきて。一つ一つを細かく覚えてないけど、すきだという想いは積み重なっていく。恋愛は流動的だ。

大人代表の永作さんは特に流動的で、ふらふらしてる。大人は辛いことがいっぱいでそれに耐える為に新しい「すき」がたくさん必要なのかもしれない。

松ケンみたいな子ども(学生)は「すき」の1こずつが宝物でずっとそこに留まってしまう。だから、どんどん変わっていく大人をみて不安に思うかもしれない。

流れる永作さんと留まる松ケンの距離は離れていくばかりだ。

学校は年1のクラス替えぐらいしか人間関係は変わらない。大人はいつ部署が変わるか分からなくて自分の行動次第で働く場所も住む場所も変えられる。歯ブラシを買いにいく薬局なんかしょっちゅう変わる。

大人の方が子どもに比べて「変化に強くてすごい」かと言われれればそうでもなくて子どもは子どもでそこに留まれる力強さがあるように思う。同じ場所に留まりながらムンムンとして暴れる。暴れても暴れ足りずに力を溜める。

砂場に溝を作って水を流す。溝の途中を砂で埋めると流れは止まる。水を塞き止めてる砂を取り除いた時の勢いは強烈だ。
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