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仁義なき戦い 広島死闘篇のnoteのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.0
前作「仁義なき戦い」の続編というより、スピンオフの作品だが、単発な作品ゆえきっちり完結し、かつ完成度が高い。
昭和20年代、元復員兵の山中正治が刑務所から出所。村岡組組長の姪である靖子と男女関係になった山中は、村岡組に入り、ヒットマンとして大友組との壮絶な抗争に身を投じる…。

前作の主役だった広能は仮出所の立場で、抗争を見守る立場になっていて、本作は若い2人の男の戦いに焦点が当たる。
愛に生きた殺し屋・山中正治 VS欲望全開野郎・大友勝利の対立が本作の最大の見せ場。

山中正治を演じる北大路欣也が名演技。
愛する女との結婚を村岡組組長に認めて欲しくて、いいように利用される無鉄砲で不器用な男を好演。
山岡の女・靖子を演じる梶芽衣子は気丈でありながら幸薄い美女。
お似合いのカップルなので、山中の一途な想いを応援したくたる。
クライマックスは、降り続く冷たい雨と迫真のドキュメンタリー・タッチ。
罠に嵌められて雨の中を逃げ回り、警察の包囲網に追い詰められた挙句、廃屋で孤独に自決する結末はシリーズ屈指の名シーン。
愛する女のためにその生涯を捧げた山中の姿に涙を禁じ得ない。

対するもうひとりの主人公、大友勝利は山中とは正反対の最低な男。
「ワシらうまいもん食うての、マブいスケ抱くために生まれてきとんじゃないの?」と語る行動原理のもとに暴れ回る。
ここまで粗暴で欲にまみれた人間は本当に存在するのか?というくらい強烈。
画面に映る仕草から全てが下品で、セリフの全てが印象に残る映画史に残る悪役だ。

男たちの血みどろの物語が展開する中、切ない男女の悲恋が描かれるのがシリーズ中異色なのだが、とても泣ける一作に仕上がっている。
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