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ウォール街のキャンのレビュー・感想・評価

ウォール街(1987年製作の映画)
4.2
舞台は金融の中心地であるウォール街。立身出世をねらう証券会社の青年が一人の巨傀と出会うことで金融市場の闇に染まっていく…。

証券取引の本質は差益だ。証券のみで生きようとするものが証券の売買をすることなく、配当金や利子のみでのうのうと生きていられる場合など、ほぼありえない。
まず証券とは具体的には債券や株式のことであり、国家や企業などの価値を直接的に表すものである。国家や企業は社会、経済、文化などの要因により市場価値が決定される。価値が決定される諸要因は複雑に絡みあっているため、国家や企業を格付けする証券の価格は非常に可変的であることが多い。まさしく「風が吹けば桶屋が儲かる」世界なのである。価値が非常に可変的であるということは、安い内に買って高い間に売れば儲けることができる。しかしいつ高くなるのか、いつ安くなるのかを予測するのは容易ではない。その予測を専門的に行うのが証券マンである。証券会社は予測を確実にするために膨大な量の情報を集める。証券マンは市場の公正な取引のためにウソをついたり情報を漏らしたりしてはいけない。しかし、もし価値を偽ったり、情報を漏らすことができればどうなるのか?それを描いたのがこの映画の世界である。
長々とここまで当たり前のことを書いたのには以下の3つの事実を説明して映画を補足したかったからである。
第一に、これだけの複雑なモノを人間が作り出し、管理仕切れない現実を説明したかった。私達はこの問題をどうやって乗り越えれば良いのだろうか。
第二に、マイケル・ダグラス演じる資本家のような人物が現実に存在したことも事実だ。しかし、彼らは不正を行うと同時に大きな社会貢献も行ったのである。私達はこのような人物をどのように受け止めたらよいのか。
第三に、資本家達は間接的に企業家や労働者に対して強い影響力を持っている。この確執は今後埋まるのだろうか。

この映画は以上のような問いを噛み砕いた表現を使って投げかけてくれる。それと同時に「個人は社会の中でどのように生きるのか」という哲学的な問いも感じ取れた。これから社会に出る方に是非見ていただきたい映画。
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