みおこし

モンスターのみおこしのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
3.7
娼婦として体を売ることしかできない自らの人生に絶望し自殺を決意したアイリーンは、最期の一杯を飲むために向かったバーで、セルビーという若い女性と出会う。まっすぐで純粋な彼女の優しさに触れたちまち恋に落ちるが...。

シャーリーズ・セロンの代表作の一本。本作でアカデミー主演女優賞を獲得した作品、怪演っぷりに息を呑みました。
この役のために激太りして、荒れた肌のメイクまで細かく再現。それだけでもすごいのに、仕草や表情まで徹底して常に口角は下がり、姿勢や歩き方も本人に似せていてもう圧倒されました。作品としても興味深いですが、とにかくシャーリーズの女優魂を観るための作品だなと。

恵まれない環境に育ち、10代前半から娼婦として身を粉にしてきたアイリーン。今の環境からどうしても脱出できない姿が本当にかわいそうでかわいそうで、更生しかけてもことごとく失敗してしまうのが痛々しくて見ていられなかったです...。誰1人として彼女を導いてあげられる人が周りにいなかったんだろうな。身も心もボロボロになり果てているのに、「私についてくれば安心だよ」「楽しくやろうよ」とまるで少女のように明るく振る舞う瞬間もあって。垣間見える強がりが余計悲しく映りました。

だからこそ、セルビーとの出会いは彼女にとってかけがえのないものになったわけですが、個人的にはそのセルビーが働きもしない&アイリーンの支えになりきれていない点が本当にムカついてしまいました。アイリーンより歳下の世間知らずの女の子なのはよく分かるんですが、どうして止めてあげられなかったんだろうと...。もちろん実際はアイリーンが起こした連続殺人事件に巻き込まれる形になったわけなので気の毒ですが、きっとアイリーンに関してセルビー自身目を背けていた点はあるはずだからとても歯がゆかったです。
ラストシーンはもう悔しくて悔しくて...。

全米を戦慄させた実在の殺人犯アイリーン・ウォーノスの事件を映画化しているため、本当のアイリーンがどんな人物で、どんな思いで殺人に至ったのか、またセルビーに当たる人物の思惑がどうだったのかなど、真相が分からないものばかりなので何とも言えないし、決してアイリーンを擁護するわけではありませんが...、あまりに不幸なその生涯を思うと本当に胸が痛みます。
淡々と描かれるストーリー、そして悲痛なシャーリーズの演技に唸る一本でした。
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