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バベルのakqnyのレビュー・感想・評価

バベル(2006年製作の映画)
4.1
モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本。一つのライフルが繋ぐ世界は世界を少しずつ変えていく。

旧約聖書の創世記に登場するバベルの塔の物語。人々は自らの技術と威厳を誇示するために、天にも届く建物を作ろうとした。これに怒った神が、それまで同じ言語を話していた人間を、互いに違う言語を話すようにしてしまい、人々は世界各地に散り散りになりバビロンは滅びた。

一つの事件が地球の裏側の人の人生を変える。世界はバラバラのように見え深く繋がっていることを暗示しているのか、そして彼らに災厄とでも試練とでも言うべき出来事が起きた後、人はより一層結束することを暗示しているのか。

古くより芸術の題材とされ、人の可能性や技術力への警鐘や皮肉とでも、驕りと自惚れへの自戒とでも解釈されるバベルの塔。
しかしこの物語では、人とは何か、世界とは神とは何かを自問する普遍的な人間の問いを描き、その個々の営みには愛という具体的な行為が遍く存在していることを示したかったのではないかと思う。




あとここはめちゃくちゃアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が上手いなと思ったとこ。

まずモロッコの兄弟の対比が素晴らしい。
兄の責任感と真面目さがあり常に冷静だが、弟には負けたくない感じ。
弟は兄より先に沢山のことを知っていて、自分の方が出来ると思っているが、恥とか恐れがなく後先考えないタイプ。
兄弟がいないと分からないような所作の表現が見事。

そして東京の若者カルチャーと菊地凛子さんの描き方が上手すぎる。earth wind & fireのSeptemberが流れ、聾者の見える世界と普通の世界を並行して描き、憧れと現実、衝動と冷静をクロスオーバーさせる。カットも日本人かよと思うくらい都会の若者の切り取り方が上手で驚きました。ブランコのカットなんかはすごく好き。

細かい所作の一つ一つにこれを上手く表現させられる撮り方はシンプルに凄いなと。脚本も映像ももっと評価されて良いと思います。
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