Iri17

(500)日のサマーのIri17のレビュー・感想・評価

(500)日のサマー(2009年製作の映画)
5.0
普通に名作だと思うし、恥ずかしながら僕と主人公のトム君に共通点が多く、僕の昔の恋人にサマーとの共通点が多く、また人生を変えてくれた特別な作品です。もう20回以上観てるんじゃないかなー。でも久し振りの鑑賞です。

これは恋愛映画じゃない。2人の男女が成長する映画。時間軸がバラバラに組み合わされていて、始まってすぐに結末が分かってしまう変わった映画なのでネタバレとか気にしないでレビュー書きます。

主人公のトムは臆病で自分から行動できない男、ザ・スミスだのジョイ・ディビジョンだの悲観的でセンチメンタルな音楽ばかり聴いてる男、細かい部分ばかり気にして一喜一憂し、ちょっとでも期待と違う部分があると逃げてしまう男、100%僕と同じなんですが…
サマーは自分から行動し、思ったことを口にして、それでいて掴み所のない、ナンシー・スパンゲンよりシド・ヴィシャスのような肉食女子。
そう、この2人実は正反対の人間。この2人を繋ぐものはザ・スミスやジョイ・ディビジョンやベル&セバスチャンのようなサブカル趣味のみ。最初はいいけど、人間性と趣味というのはまた別物。好みの見た目と共通の趣味だけでトムは運命だって感じているが、サマーは運命だとは思っていないし、運命そのものを信じていない。

2人は『卒業』を観て別れる。今はぷかぷか浮かんでいるけど、先に進まなければならない。でもトムは先に進みたくない。今までずっと現実から逃げてきたから進むことを恐れている。トム自身も2人がうまくいかないことを分かっていたのだと思う。天使とのチェスで時間稼ぎをし(ベルイマン『第七の封印』のパロディ)、本当の自分や本当のサマーから目をそらす(こちらもベルイマン『仮面/ペルソナ』のパロディ)。

自分から何も行動しないで、運命を待ち、事態が好転するのを待ち続けるトムはサマーとの最後の会話で成長する。ダメな自分から『卒業』し、次の季節(オータム)に進む。
だからこれは恋愛映画じゃない。2人の人間の成長の映画だ。



ちょっとここから完全に個人的な思い出になってしまうんですが、僕と昔付き合っていた恋人も、お互いロックが好きで、映画が好きで、本が好きで付き合い始めた。バンドを組んでいつも一緒にいたけど、なんとなくお互い愛なんてないなと思っていて、嫌いなわけじゃないし、好きだけど多分恋人としてうまくいかないのを分かってた。
まさにこの映画を観た後に別れた。お互いが成長するには別々になった方がいいなと思ったからどちらともなく。
今でも大親友でよく遊ぶけど、あのままズルズルやってたらお互い成長できてなかったし、仲悪くなってたかもしれない。
だから僕たちに成長の機会を与えてくれたこの映画は本当に特別で大切な映画。
めっちゃ自分語りでした。すいませんm(_ _)m
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