爽

ふたりのベロニカの爽のレビュー・感想・評価

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)
4.3
☆☆☆☆:オススメ!
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ポーランド映画祭/東京都写真美術館ホール にて鑑賞。
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トリコロール三部作が名高いキェシロフスキーの出世作。
ローファンタジーでありながら寓話性が強く、ビクトル・エリセのミツバチのささやきを思い出した。
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ポーランドとフランスという地続きでありながら国境は接していない2カ国に住む2人の「ベロニカ」を巡る物語。
イレーヌ・ジャコブの一人二役でありながらキャラクターはとても似通っていて、演技だけ見比べてもどっちがどっちか分からない。
非常に似通いながら母国語の異なる2人のベロニカが、同じ時代に生き、邂逅し、運命の繋がり(日本語字幕では「霊感」)を感じながら日々の暮らしを見つめる。
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2人とも音楽を生活の主体としているが、訪れる変化は対照的で、最初はパラレルワールド的な解釈をしようとしていた。
でも星々の輝きであったり、紐であったり、運命を暗示するモチーフが多く、また交通事故でスクラップと化した車など悲劇的なモチーフを観ているうちに、やはり2人の間には何か関係性があるものと見て解釈を考えていた。
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そのヒント、というかかなり答えに卑近なセリフがラストに出て来ることで、一気に胸のつっかえが降りるような感覚になった。
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「霊感」という日本語訳が絶妙で、たしかにこんな意味合いなら俺も「霊感」をよく感じるわ、と共感した。
それは直感や気分と言い換えてもいいかもしれないけれど、例えば「なんとなくまだ家に帰りたくない」というような、理屈で説明しきれない余白を埋める寓話として本作は作用していると思った。
爽