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ふたりのベロニカのOguのレビュー・感想・評価

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)
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東京都写真美術館で開催されているポーランド映画祭でキシェロフスキの『ふたりのベロニカ』を観た。いつか観たことがあると思っていたのだけれど観始めてすぐそれが思い違いであることに気がついた。こういうことはよくあることなので驚きはしないが、自分の思い込みには我ながら呆れるしかない。
映画は全編を通して映像が美しく、100分にも満たない上映時間の中で印象的なシーンが幾つもさりげなく挿入されていた。それが何を意味しているのか、あるいはしていないのか、観るものに委ねる余白のある、文学的で映像詩とも言える作品だった。
家に帰り心当たりを探してみるとやはり『ふたりのベロニカ』のVHSが見つかった。思い込みの原因はこれだったのだ。自戒を込めて数年ぶりに電源を入れたビデオデッキで再生すると、映像のあまりの暗さに驚いた。映画祭で上映されている4Kデジタルリマスター版と比べると視界が半分塞がれているような感覚だろうか。
しかし目が慣れてくるとこの暗さにも意味があるのだと思えた。公開された当時、1991年のポーランドは東欧革命とともに民主化してから2年ほどしか経っていない。映画の中でもデモのシーンが描かれ、劇中で最も重要なシーンのひとつにもなっていた。
文字通り巻き戻しながら確認するように2時間ほどかけて観直すと、観逃していたシーン、聞き逃していたセリフ、それから決定的に観誤っていたことがあった。後半は少しウトウトしたところもあったとは言え、前半の観誤りは思い込みによるものでまったく呆れるしかない。それでもなお作品の素晴らしさが損なわれるということはなかったのだけれど。
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