クロル

荒野の決闘のクロルのネタバレレビュー・内容・結末

荒野の決闘(1946年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

この作品は芦原伸『完全保存版 西部劇を読む事典』(株式会社天夢人 (2017/11/3))にて取り上げられていたことから見つけた。

気に入ったのは、喧騒と静寂との緩急のすばらしさである。バーや教会での不特定多数の人々のざわめき、生演奏の陽気な音楽、そこへ銃声が轟き、一瞬の静寂、それから金切り声。

この一瞬のシンとした瞬間は、生演奏がピタリと止まることによって強調されているように思う。人間が演奏しているからこそ、演奏者の状況に応じて音楽は唐突に止まる。結果、無音の世界がハッと現れる。そして荒っぽい騒ぎが収まりひと段落つくと、演奏者はまた明るい曲を奏で出す。

そして、こうした緩急の強いシーンが続いてきたからこそ、ラスト10分の静謐が際立つ。足音が、木の軋む音が、必要以上に大きく響く感覚。息が詰まるような思いだった。

この作品は、「決闘」と題しておきながら、派手な銃撃戦よりも人間関係の絡み合いや日常風景により重きを置いた作品だと思う。
詩の朗読や軽快なダンスなど、当時の芸術観を感じられるシーンが印象に残った。また、ちょっとした会話を通じて各登場人物に対する親しみが湧き、暖かな気持ちになれる場面も多くあった。

だからこそ、人々が呆気なく撃ち殺されていく姿には思わず目を見開かされ、本気で嘆かされた。
90分間と少しの短い映画でありながら不思議と登場人物に入れ込んでしまうような、力のある作品だったと思う。

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