くもすけ

イルカの日のくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

イルカの日(1973年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

原作書いたのはロベール・メルル。アルジェリアで生まれ通訳として軍に務めていたダンケルクで捕まり、労働キャンプに入れられるが脱走している。この経験をもとに書いた小説は映画化もされて作家としてのキャリアがはじまり、ナチ絶滅収容所やカストロの伝記など書いた後(彼は熱心な共産党員だった)、今作の原作を書く。ちなみに代表作は1977-2003まで書き継いだ歴史小説で、20世紀のデュマとまで呼ばれてるそうな。

映画の監督はポランスキ、シャフナーが脱落しニコルズに回ってくる。盗聴、大統領暗殺、など70年代陰謀映画の雰囲気だが、妙に間が抜けている。映画のタイトルは「イナゴの日」に倣ったのか?文明批判は脱臼して、学者には見えないスコットとイルカのパー、ファー、ととぼけたおしゃべりばかり印象に残る。フレイカーの撮影でイルカたちの元気な姿を眺められるのはいいが

■米国海軍海洋哺乳類プログラム
この時期イルカやアシカを使った実験が行われていたようだ。アメリカ海軍は1960年に、防衛、地雷探知、潜水艦や水中兵器を支援するために、イルカやアシカと協力するプログラムを実施している。その後ヴェトナムやアフガニスタンで水雷撤去に実績があるようだ。
ちなみに殺人目的の訓練は行われたことがなく、その理由はイルカには敵味方の区別ができないからだそうな。映画の結末はイルカの生態に忠実だったわけね

カリフォルニアの海中居住施設SEALAB IIは1965年建設され、バンドウイルカがプロジェクトに参加し水中作業員の救助をするよう訓練された。結局プロジェクトは乗組員の事故死により69年に中断されるが、その少し前異種間コミュニケーション目的としたヴァージン諸島のイルカ研究所が閉鎖される。映画はこの要素を脚色しているようだ

■The Girl Who Talked to Dolphins
ジョン・リリーはNASAの援助でヴァージン諸島にイルカの研究施設をつくる。彼はリアリーとともに精神世界の権威として神格化されていくが、当時あちこち飛び回って忙しく、研究所での作業は途中からマーガレット・ロヴァットに任されていた。施設のイルカはフロリダ海洋水族館から借りたもので、イルカショーが呼び水だった訓練済みのイルカたちはテレビ番組「わんぱくフリッパー」としてお茶の間の人気もあった。

23歳のロヴァットは施設のそばに住んでおり、幼い頃読んだ本のしゃべる猫に憧れて、施設に出入するうちリリーと知り合う。イルカと言葉をかわせるようになるには24時間施設で過ごす必要があると申し出て、仮設ベッドで寝起きしプールの上に吊った椅子で報告書を書いた。「Hello Margaret」と言わせるために英語を教え、Mを発音させようとするがかわりに泡が出てしまう。イルカは3頭いたが、なかでも若いオスのピーターが懐き、性衝動を満たそうと体をこすりつけてくる。どこからもれたのかのちにハスラー誌がこれを扇情的な記事にした。
リリーはLSDや音楽、テレパシーを使ったコミュニケーションを試みるが失敗。結局目立った結果は出ず、施設は閉鎖される。ピーターはひなびたプールに移され、最後は呼吸をやめて自殺したという。ロヴァットとピーターを題材にしたドキュもつくられているようだ