のり

蝉しぐれののりのネタバレレビュー・内容・結末

蝉しぐれ(2005年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

阿修羅城の瞳を見て、染五郎さんの他の作品も見てみたいなーと思ったので借りてきた。
藤沢周平好きの母に「蝉しぐれの映画借りてきたよー」と言ったら、「あの話の人たちはただただ我慢しすぎて、つらくなるだけだよ」って言われたんだけど、まさにその通りだった(笑)
正直前半から中盤のシネマトグラフィーはあんまり好みじゃなくて。安っぽいTVドラマかなんかみたいに見えちゃうなあと思うところも少なくなかったんだけど(能のシーンとかちょっと長くないですかね…?あとは個人的に血が怖い)、最後のシーンで全てを持って行かれた… このシーンのために作られた映画だと言っても過言ではないんじゃないかと思うレベル。
時が飛んでモノクロで始まるところから、文四郎がお屋敷に来るとだんだん画面が色づいてきて… 極限まで動きの少ないショットの構成というか。ただじっとお互いを見てる2人の目線みたいで、うまいなあと思った(前半なんだったの?まさかのギャップ萌え狙い?笑) はじめは並んで縁側に座ってたんだけど、ふくは涙をこらえてるのか、カメラ側にやってきて、文四郎に背を向けて座るんだけど、障子に半分隠れてる文四郎の顔のアップと、後ろを向いてるふくのショットが交互になっていて、こんなに離れてるシーンなのに、溢れんばかりのお互いへの想いが感じられる不思議。ふくの横顔を見て、喉が熱いんだろうなって…
2人のとつとつと話す雰囲気が、また秘めてるものの大きさを感じさせるというか。「あなたのお子が私の子供で、私の子供があなたのお子であるような人生はなかったのでしょうか。」みたいなことを言ってたと思うんだけど、ただ一緒になりたかったって言いたいがためにえらい遠まわしだなと(;▽;) 「文四郎さん。」っていう一言さえ普段は口にするのも叶わなくて、なんてなったら、その一言を言うだけで心臓飛び出しちゃいそうになっちゃいそう… たしかふくに会った時、2回とも「おふくどの。」「ふくです。」っていうやり取りをしてたと思うんだけど、ふくは本当は"ふく"って呼んでほしいんだろうなあ、って思っていてからの、最後の「ふく。」でもう涙腺いかれた… この二文字を口に出すのに何年かかってんだよ(口悪い) あの、ふくの息が止まるような瞬間がほんとに胸に迫る。2回目のあとはほんとに音が何にもなくなるんだよね。 前半の子役のシーンとか、正直「演技力…(∵)」ってなったりもしたんだけど、ここで回想が入るために前半はあったのか…!とすら思えるほど。 一番最後の籠のシーンは、籠の覗き窓にかけた木村佳乃の指と、彼女の八の字眉毛にまた泣かされた(;▽;) 人のことを好きな気持ちを押し殺すだなんて、きっと1日でもつらいだろうに、20年ってもう頭おかしくなりそう/(^o^)\笑
柄本明がよかったなあ。あと今田耕司とふかわりょうが若い(笑) 2人ともいい役だと思うんだけど、なんかここも妙に活かしきれていない気がしちゃうんだよねえ… 山田洋次の映画が観たくなりました。 染五郎さんは、出門のようなチャラチャラ感(?)は全くなくて、ただただ真面目で寡黙で朴訥としたお侍さんでした。ほとんど表情の変化はないのに、最後のシーンで、本当にほんの少しだけ、眉間にしわを寄せて、鼻を震わせるところがまた… 思い出しただけで泣きそう。木村佳乃もちゃんと見たのは初めてだったけど、とてもよかった。
時々クラシックみたいな雰囲気のある音楽が素敵だなあと思ったんだけど、岩代太郎って金城武の太平輪(The Crossing)もやってるのね。ますます見たい。
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