似太郎

ションベン・ライダーの似太郎のレビュー・感想・評価

ションベン・ライダー(1983年製作の映画)
4.5
相米慎二の十八番である超長回しが冴えるダーク・ジュブナイルもの。

現実感がほぼ皆無でファンタジックな雰囲気が強く押し出されており『台風クラブ』ほど陰惨ではないが、やはり若者のイライラや暴力衝動を扱っている。全編、これでもかと破壊的。J-ムービーの元祖。

脚本は『ガキ帝国』の西岡琢也とチエコ・シュレイダー。とにかくこの監督のしつこい程の長回しが「何したいんだろう…?」とたまに思わされるのだが、詩情を感じさせる儚い出来栄えとなっている。

子供達の通過儀礼を描いたものだと他に『お引越し』というのもあるが、思春期の少年少女の【暗い闇】みたいなモノに取り憑かれた感のある相米慎二的アプローチが、のちの岩井俊二や行定勲作品の先駆けとも思えなくない。

反抗期特有の心理状態を描いており、世の中に鬱憤を抱えた若者向けの作品。そこが本作の「良さ」だったりする。当時流行ったマジック・リアリズムみたいなシーンも見所の一つ。個人的には相米慎二のベスト。
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