Mila

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコルのMilaのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

今までに観た映画の中で最高に好きな映画だった。

名探偵コナンが昔から大好きな私にとって、推理とトリックの数々が最小限の説明で淡々と披露されるこのスパイ映画は、あまりにもスマート。ミステリー好きとしての心を鷲掴みにした。

それに、トリックが面白いだけでなく、トム・クルーズがめちゃくちゃカッコいいのも最高だ。普通の探偵ものと違い、まず彼は迷わない。迷っている暇は彼に残されていないので、最短でトリックを見抜き最適解を出して動く天才。

さらに、頭脳と同じくらい天才的な身のこなしだ。椅子の上の探偵を自責の念に駆らせそうなくらい、彼にはピンチの時もそうそう都合よくヘリなど来てくれないので、何度も限界まで踏ん張り、走る、走る、泥臭く走る。

そんな身体とは裏腹に、頭だけは至って冷静で完璧な判断を下すのだ。つまり天才努力型の超イケメン。心を奪われないわけがない。

ミッションインポッシブルがあまりに面白かったので、シリーズの順番を気にするのも忘れて、性急に本作から観てしまったのだが、これはあの1作目を上回る面白さだった。

チームメンバーのセリフによってストーリーが分かりやすくなっているし、それぞれの感情や関係性も描かれるし、比較対象ができてトム・クルーズのかっこよさが一段と引き立つ。

何より好きなシーンは、インドでのミッション中にチームメンバーがお互いをコードネームで呼び合うところ。切迫したミッション中、女性メンバーをヴィーナスと呼び、色仕掛けの任務を遂行する彼女を勇気付ける。緊迫していても、心だけは余裕を持って状況を楽しんでいてロマンに溢れている。

そして何と言っても、最後に心を射抜くのが、トム・クルーズ夫婦のやりとりだ。彼が側にいると妻の命が狙われてしまうため、親友に妻を預けて世界中を飛び回っていたのだ。今回のミッションのチームメンバーに、妻は死んでいないのかと聞かれ、「遺体を見たのかい?」と聞きながら彼がバーの外に目を細めると、視線の先には1人の女性が、男性と談笑しながら歩いてくる。

親友と妻が仲睦まじく歩く、それだけで極めて切ないが、彼は久しぶりに見た妻の姿に嬉しそうに微笑んでいる。そして妻が親友に連れられ飲食店に入る瞬間、彼女は数十メートル離れた夫の視線を感じて振り返り、声もあげずに心底嬉しそうな顔をするのだ。

物陰から覗く彼が微笑み返したのを見たあと、妻は意外にも、潔くドアの向こうへ消えていく。それを見届けた夫は、次の任務へと煙の奥へ消えていく。また必ず会える日が来ることを、お互いの心が通じ合っていることを確信しているからこその、儚くて美しい瞬間だった。スパイという立場の切なさの中に愛を描いた、最高のプロットだ。
Mila

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