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人生はビギナーズのqpのレビュー・感想・評価

人生はビギナーズ(2010年製作の映画)
3.5
 オリヴァーは母の死後、父のハルがゲイだと知ります。父も亡くなり、人見知りのオリヴァーは犬のアーサーが話し相手になるが、仮面パーティでアナと出会い、という話です。

 最初にオリヴァーが家に一人でいて、犬に話しかけるシーンは孤独そうです。日本でも未婚者が増えていますが、それより孤独感を感じたのは家が広いことも原因でしょう。

 仮装パーティはいい出会いを提供してくれます。オリヴァーとアナは仮装しているので素顔と少し違いますが、会話が簡単に生まれます。仮装を脱いだ時に私も驚きました。やっぱり外出してみるものですね。そして、このきっかけを作ってくれたのが犬のアーサーだと感じます。

 2人は話せないアナと電話するという面白いことをし、順調に関係が成熟します。キャミソールを取ってとアナに言われるシーンでは、オリヴァーが口下手であること、アナの優しさが伝わります。

 本作はオリヴァーの子供時代、父ハルが生きている時、共に亡くなった現在と時系列が交錯します。また、オリヴァーの説明とともに、箇条書きのように名詞とその写真が説明され、時代の違いを感じとることできます。これは現在のオリヴァーの心情やトラウマを映しているように感じます。

 でも、これらがアナにどのように伝わっているのかが観ていて分かりませんでした。アナは他人との違いや自分を受け入れて生きていますが、精神的に変わっているとは感じませんでした。アナの家族や家での暮らし方、仕事などの説明が中途半端で分からなかったです。

 ゲイやユダヤ人である葛藤が時間的な変化で描かれています。昔は隠さなければならなかったですが、父は同性愛を公表してからオープンで幸せそうに見えます。今は自分の心に正直に生きることができる時代となっています。

 その分、現代は周りを気にしなければならなくなり、息苦しくなったこともあります。他人と関わるのが面倒で難しくなってきており、オリバーのように孤独になる人も増えています。犬が一緒では入れなくなったところも増えましたし、お祭り騒ぎすることも難しくなりました。なんか矛盾していますね。

 ストーリーがゆっくり進んだからか、何かが起こったわけではないからか、急に終わった気がしてしまいました。振り返ると、アラフォーでも色々葛藤しながら成長していることを感じました。

 本作の特徴として、犬のアーサーの心の中が分かるから面白いです。犬以上のものを求めてしまいましたが、ここは良くも悪くも期待はずれとなりました。
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