元首相の自叙伝執筆を請け負ったゴーストライターが、取材を重ねるうち、隠されたスキャンダルに迫ってゆくという話。
プロットだけなら社会派サスペンスにもなりそうな作品だけれど、全編を包む不穏な空気はスリラー映画そのものです。
常に暗い雲に覆われた空。荒涼とした海と砂浜。街から隔絶された別荘。風の舞う音しか聞こえない、修道院にいるかのような静寂。感情を表に出さない住人たちの言動。
些細な描写なんだけど、そうしたディテールが観る人たまらなく不安にしてくれる。ポランスキーの映画術ですね。神は細部に宿るってのを感じられる一作でした。