ボブおじさん

キングコングのボブおじさんのレビュー・感想・評価

キングコング(1976年製作の映画)
3.9
映画館で観る映画は観た時の自分や世の中の状況も相まって記憶となり、しばしば思い出補正されている。自宅やスマホで見る映画ではこのようなことはないだろう。

この映画は自分が小学6年生の時、初めて女の子と一緒に観に行った映画として、いつまでも記憶されるのだろう。もっとも初デートは1対1ではなく3対3のグループ交際の様なもので、男女交互に座って映画を観た後、シェーキーズでピザを食べて帰っただけだと記憶している😊

肝心の映画だが、数ある〝コング映画〟の中でもこの映画の評価は決して高くない。だが、私の中では例の思い出補正もあり今でも特別な一本となっている。

まずオープニングが良い。監督のジョン・ギラーミンといえば「タワーリング・インフェルノ」が最も有名だが、あの作品もヘリからの空撮によるオープニングが良かった。

本作も油田を求め大型調査船が南太平洋のスカル島(髑髏島)を悠然と目指すのだが、このオープニングシーンが〝さあ!これから皆さんを一代スペクタルの世界へご招待しますよ〟と宣言しているかのようでワクワクしてくる😁

更にヒロインのジェシカ・ラングに目を奪われた。撮影当時26歳だった彼女の美しさもさることながら、実はこの映画かなりエロいシーンが多い。コングの手のひらの上で指先で愛撫されたり、滝のシャワーを浴びるシーンなど殆ど半裸状態となり、隣の女の子どころではなかった😅

クライマックス、今はなき世界貿易センタービル(9・11以前の同ビルを見られる映像としても貴重)に上ったキングコングにヘリコプター部隊が攻撃を仕掛けるシーン。監督のギラーミンはイギリス空軍出身だけあって空撮やヘリコプター アクションはお手の物。その腕前は前作の「タワーリング・インフェルノ」でも実証済みだ。

そして全編通して描かれるコングとジェシカ・ラングとの悲しき恋など小学6年生の私の心は完全に掴まれたのだ。世間の評価はどうであれ、私にとっては忘れられない大切な映画である😁


公開時に劇場で鑑賞した映画をDVDにて再視聴。


〈余談ですが〉
キングコングの映画は今まで一体何本作られて来たのだろう。まがいものまで数えればキリがないが中でも有名なのはオリジナルの「キング・コング(1933)」とピーター・ジャクソン監督が幼い頃からの夢を叶えた渾身の傑作「キング・コング(2005)」ではないだろうか?

本作はその間に挟まれ批評家や映画ファンの間での評価は残念ながら低い😢

評価が低い理由は、見せ場の一つである髑髏島での恐竜との格闘シーンがカットされているなどオリジナルからのストーリーの改変がオリジナルファンから不評だったこと。まあこれは理解できる。オリジナルが優れていればいるほど、ファンは脚本の変更には敏感になるものだ。

だが最大の理由はそこではなく、この映画の〝誇大広告〟にあるという。

当時、〝映画のために巨額の費用をかけて実物大のロボットを作り、スクリーン狭しと大暴れ!〟と映画雑誌などで大いに宣伝された、身長20メートル、胸囲12メートル、手の平の直径3メートル、足のサイズ2メートル、重さ5トンという〝巨大ロボットコング〟が実際の撮影では、デカイだけでまったく役に立たず、演技どころかまともに動くことすらままならないポンコツだったというのだ。

結局、本編中このロボコングが登場したのはわずか30秒程度で、ほとんどのシーンは、着ぐるみを使って撮影されていたのだとか。確かに当時のパンフレットにもこの〝巨大ロボットコング〟は掲載されているので、それを期待したファンは裏切られた気持ちになったのだろう。

更にクライマックスの世界貿易センタービルでのヘリコプターとの戦闘シーン。そのシーン自体は秀逸なのに、公開当時のポスターはジェット戦闘機をつかむコングの雄叫ぶ姿となっている。確かにこれは〝ポスター詐欺〟と言われても仕方がない😢

更に更に、本来スペクタル映画あるいはアドベンチャー・アクションであるはずの〝キングコング〟がコングと人間の女との恋愛映画になってしまったという批判だ。そのせいでジェシカ・ラングは、この後〝コング女優〟と嘲笑されることとなりキャリアにブレーキがかかったと言われている😭


だが、それがどうした‼︎

そんな外野の出来事など、まるで知らなかった当時の私にとってこの映画は、素晴らしいオープニングの映像と音楽で始まり、ストーリーも面白く、迫力ある映像とジェシカ・ラングの妖艶な姿と共に深く心に刻まれている。

前評判もポスターも〝コング女優〟の烙印も当時の私には関係なかった。ただ単に映画そのものを観て心を動かされたのだ!
だが映画とは本来そういうものではないのか⁈

我が家の映画コレクション棚には3本の「キングコング」が所蔵されている。オリジナルは歴史に残る名作でリスペクトに値する。ピーター・ジャクソン版は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで天下を取った監督が、誰にも憚られることなく幼少からの自分の夢を実現した傑作だ。

だが、我が家で1番視聴回数が多いのは、この1976年版 題名に中黒・のない「キングコング」だ😁


おまけの余談
〝コング女優〟と揶揄されたジェシカ・ラングは、しばらくの間役に恵まれなかったが1979年「オール・ザット・ジャズ」で見事に復帰すると翌年「郵便配達は二度ベルを鳴らす」で当時 飛ぶ鳥を落とす勢いのジャック・ニコルソンに一歩も引けを取らない熱演で映画史に残る濡場を演じた。

そして遂に1981年「トッツィー」でアカデミー助演女優賞を受賞した彼女は、2009年エミー賞、2016年トニー賞を受賞し、演技の3冠を達成した😁