ベティー

Vフォー・ヴェンデッタのベティーのレビュー・感想・評価

Vフォー・ヴェンデッタ(2005年製作の映画)
4.0
全体主義国家として経済的に返り咲いた近未来のイギリス。人々は勝利や自尊心と引き換えに夜間行動禁止や検閲、報道統制など、さまざまな権利を制限されてくらしていた。そんな状況にテロ攻撃を仕掛ける不気味な仮面の男、Vの戦い。

相当にディフォルメ化されたヒトラー政権的?雰囲気でとても設定がわかりやすいです。首相っぽい人の名前もサトラーだし(笑)

雰囲気がイメージの外をいっていてとてもいい。仮面を被り悪の政府と戦う男という設定から自動的に連想してしまうような勧善懲悪だったり、無双系アクションだったりじゃない。そういうのも好きなのですが、ただ、私の場合、あらかじめ抱くイメージの外をいくっていうのは映画を見たときに面白く感じる要素の一つですね。
どことなく掴みづらいキャライメージなのですが、地味とも違い、うちに秘めた復讐心と政治的信念、といった、やっぱり地味か?な独特なキャラです。
こういう作品にしてはめずらしく、政治色強い感じとかも好きですね。まあ政治、っていうほど具体的政策論があるわけでもないですが。
なかでもVの演説をするシーンで、現在の状況は国民一人一人に起因している旨の指摘をするところなんかかなりめずらしく、非常に印象的でしたね。
明らかにいわゆるヒーローものでもなく、腐敗した悪の政権に立ち向かう正義の男のストーリーでもなく、よくわからんオリジナルな雰囲気を醸し出しています。
TVの演説終了後のVマークがかっこいい。

あと思ったのは、政権=悪という構造は受け入れられやすい作りなのかなと。最近の日本のメディア(昔からか?)などもううんざりするくらい政府叩きで視聴率稼ぎの風潮ですが、こういった映画をみると、今の日本がいかに民主主義国家的で言論の自由が保障された平和な国かわかる。もし現政権が本当に独裁政権なら危険分子は消されますからね。
また、TV局のアナウンサーだかコメンテイターだかの男がとても醜く描かれていて興味深かった。
かなりディフォルメされて描かれてはいるが、こういったことは実際にどこでも行われていることじゃないだろうかと思う。この映画でのメディアは、情報を伝えることではなく隠蔽するために使われる。そして国民の不満や疑念をそらすために敵を作りだし過激な言動で心の奥に潜む差別意識を盛り上げ、扇動する。それは、かつての栄光から落ちぶれた設定のアメリカだったり、移民だったり、異教徒、同性愛者、といった次第。なにかを伝えようとするときにはは必ずその奥に発言者の意図があり、つまり公平な報道はありえない、という考えを極端に膨らませて皮肉った描写のようにも感じられたが、それは映画をみている私自身がメディアに対してそう感じているからかもしれませんね。
政府側のプロパガンダと化したアナウンサーの、論理性を欠いた暴力的で扇動的なスピーチ、私的には皮肉にも昨今の反政府デモを思い出させられました。
本心からの信念に基づいたスピーチかどうかは、技術的なところとは関係なく、つたわってしまうものかもしれないな。
いろいろと思考を刺激される映画で好きです。
ベティー

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