あしたか

怒りの葡萄のあしたかのレビュー・感想・評価

怒りの葡萄(1940年製作の映画)
3.9
大規模資本主義農業の進展や、深刻化した干ばつ・砂嵐により、所有地が耕作不可能となった家族は故郷オクラホマを追われる…。
貧困農民である一家が新たな職を求めて点々とする物語であるが、旅先では数々のトラブルが発生するため常に不安が付き纏う。まるでスパイ映画でも見ているかのような居心地の悪さである。
未来が見えないその日暮らしの生活、理不尽な体制、驚くほどの低賃金、耐えきれず死亡する家族など、恐ろしい現実に直面しながらも一家は諦めずに不屈の精神で戦い抜く。
決してハッピーな物語ではないが、悲しいだけの物語でもない。終盤の主人公とその母との会話、締めの母親の台詞は実に象徴的で熱く、人間の強かさを感じさせる感動的なものだった。
調べてみると本作の家族の放浪は旧約聖書の出エジプト記をモチーフとしているらしい。社会批判的なメッセージ性も含め、非常に深みのある作品であると感じた。
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