Jeffrey

オルカのJeffreyのレビュー・感想・評価

オルカ(1977年製作の映画)
3.0
「オルカ」

冒頭、ここはカナダ、ニューファンドランド島。果てしない大海原、海底調査を続ける女、北極海へ。鯱の親子、殺害、復讐。バンポ号、ホワイトシャーク、男のロマン、海洋研究所の学者。今、最後の死闘が始まる…本作はスピルバーグの大傑作「ジョーズ」の影響により作られた動物パニックの1つであり、マイケル・アンダーソンが監督した米国とイタリア合作のパニック映画で、この度BDにて再鑑賞したが面白い。音楽は昨年亡くなられたエンニオ・モリコーネで、1977年にシャーロット・ランプリングとリチャード・ハリスを主演に迎えたシャチが人間を襲うと言う作風だ。製作は「キングコング」なので有名なディノ・デ・ラウレンティスで、脚本はルチアーノ・ヴィンチェンツォーニが海洋学者の弟の助言を参考に書き上げたそうだ。「オルカ」から「スター・ウォーズ」まで新時代を築くスパックロマンと言えるだろう。本作の制作費は1200万ドルで約36億円、構想1年、撮影日数1年2ヶ月と言う超大型映画である。今回の鯱はロサンゼルスとサンフランシスコのマリンランドにいるものが撮影に使われており、水中アクションを見事に演じたそうだ。世界の水族館では鯱に多額の金額(値段)をつけたりするがそれはサイズと捕獲に要した時間と手間によって決められるそうだ。





さて、物語は海…それは人間の心を駆り立てる、いつの時代にも変わらないロマンそのもの、果てしない大海原。そこにはまだ人間の知らない巨大なドラマが待っている。アメリカとの国境に近いカナダ東海岸沖で海底調査を続けるレイチェルは南カリフォルニアにある海洋研究所の学者で、専門は魚類、現在は海の野獣と言われるオルカを担当している。レイチェルが潜っていると突然、巨大なホワイトシャークがその凶暴な姿を現した。声にならない声を上げてボートに戻るレイチェル。だが間一髪近くを通りかかった船のエンジンの音に危地を脱することができた。船の名はバンポ号。100トン足らずのキャッチャーボートだ。船長のノランは父の代から捕鯨に生きる筋金入りの海の男である。彼は日本のマリンワールドからの注文でホワイトシャークを生け捕るため、はるばるマイアミからやってきたのだった。

乗組員は父の良き相棒だったノバック老人、舵を握る若者はポール、ポールの恋人の兄の3人。ノランが、ホワイトシャークを発見した。特徴のある三角形の背びれに向かってエンジンがフル回転する。海上でレイチェルと連絡をとっていた助手のケンは彼女の身を案じてバンポ号の行手を遮るのだった。このため、ノランの狙ったモリは獲物を打ち損ねてしまう。ケンのボートのエンジンが海藻に絡みつき、取り除こうとケンが海に飛び込んだ時だった。さっきのホワイトシャークが近づいてくるではないか。その瞬間、7メートルもある巨大なホワイトシャークが何かに弾かれたように宙に飛び上がった。激しく波立ったかと思うと、やがて海面が赤く染まり、ホワイトシャークの頭部が海面に浮かんだ。すでに半分食いちぎられ、肉塊と化した残骸。ホワイトシャークをこれほど簡単に食い殺してしまうような怪物がこの世にいるのだろうか。レイチェルには分かっていた。オルカだ。

ノランが初めて知ったオルカの凶暴さだった。彼はオルカの生捕り作戦を思いつく。もちろんレイチェルは猛反対した。だが彼は全く聞き入れず、捕鯨用具を全て2倍に補強して船を出した。目指す獲物を早くも発見、しかも、ヒレ大きさから想像するととてつもなく巨大な怪物だ。モリの狙いをつけるノラン。だが、驚くべきスピードで位置を変えたオルカに、モリは海中に沈んだ。途端に奇妙な叫び声が響いた。モリは並んで泳いでいたもう1頭の居オルカに命中したのだ。メスのオルカが人間そっくりの声を上げる。力尽きたオルカは船のスクリューで体を引き裂かれてしまう。引き上げたオルカは胎児を産み落とした。ノランの忌まわしい過去が蘇る。数年前、彼は酔っ払い運転に出産直前の妻を殺されてしまったのだ。妻は子供を産んだが、その子も…。

バンポ号が突然激しいショックを受けて大きく傾いた。岩礁はないはずだ。再び船がものすごい衝突を受けた。何かが船に体当たりしているのだ。船の機関室が浸水し始めた。船がまたも体当たりで傾く。次いで黒い巨体が船を飛び越える。信じられないその光景、その巨大さ、メスのオルカを取り戻そうとしているのに気づいたのノランはメスのオルカを海に突き落とした。ショックで傾いた船からノバックが海中に転落してあっという間に、オルカの黒い巨体に飲み込まれてしまう。やがて海上に浮かんだオルカの眼がただ一点、ノランを見つめる。夜明けの海を傷ついたメスのオルカを支えるようにしてオスのオルカが進んでいく。この2頭を別のオルカが2頭付き添っている。サウスハーバー近くの浜辺に押し上げるとオスはメスを浜辺に押しあげ悲しそうな叫びを残して海へ去っていった。

オルカの瞳に涙が光。ノバックの葬儀を済ませたのノラン船長に対してオルカの挑戦が早くも始まった。修理中の船を止めている港湾内で漁船が次々とオルカによって沈められた。エスキモーの教師ウミラクは、オルカは自分や仲間を襲ったものに必ず復讐すると言うのだった。野生の男と海の野獣の執念、復讐心がぶつかり合って、どちらも決着をつけずにはいられない運命なのだ。オルカを誘い出そうとする彼の陽動作戦を読み取っているかのように、オルカは彼の待ち構えている場所ではなく、港の埠頭に近づいた。そこから石油タンクへパイプが走っている。オルカの狙いはなんとそれなのだ。海面から巨体を踊らせるとパイプを食いちぎった。石油が流れだす。ついでオルカは見張り小屋に体当たりした。ランプが転げ落ち、石油に燃え移った。炎はパイプに燃え上がり、タンクが爆発した。

オルカは勝ち誇ったように高くジャンプすると海中に姿を消した。オルカ襲来を恐れ、不吉な前兆とみた港街の人々はノランに船出しろと迫るのだった。バンポ号が港を出た。同乗するのはノランを愛し始めたレイチェル、ポール、ケン、ウミラクの4人。ある日突然、オルカが姿を現した。そして後についてこいとでも言うように北へ向かって進んで行く。船はオルカを追って北上を続け、キャボット海峡を抜け、セントローレンス湾に入り、ハドソン湾を突き進んでフォックス海盆にやってきた。ここはもう北氷洋だ。巨大な氷山が左右から迫り、危険この上もない海域だ。船の燃料は既に底をついていた。四方を氷山に囲まれたこの冷たく澄んだ海の中に激しく対峙する1人の男と一頭のオルカ。静かに時の流れるままに生きていたであろう彼ら。この平和を破ったのは何か、今、想像を絶する死闘が始まろうとしていた…とがっつり説明するとこんな感じで、海洋は人間の起源と言われており、地球の3分の2以上を占める海洋のロマン、そこには未知なものへの人間の憧れや恐怖とともに、我々の大いなる未来の姿をそこに見いだすことができるそんなメッセージ性の強い映画である。

今は科学万能時代の人間への警鐘を込めて、かつてない巨大なドラマが写し出され、人類の未来を託したメッセージを握り締めている。この映画の主人公は人間でもオルカでもなく、広大な深遠な海そのものがヒロインになっている。スペクタクル巨篇「キングコング」の製作者でもあり、この映画の制作、総指揮の陣頭に立ったラウレンティスがその映画生命をかけて描いたとした海は誰にとっても愛と夢の冒険に満ちたロマンの宝庫なんだろうなと感じる。今思えば、
監督には「青い大陸」や「チコと鮫」などのクイリチが担当しているのがずば抜けて素晴らしく思う。そして007シリーズのカ華麗な映像美で有名なテッド・ムーアが撮影に入っていて、「カサンドラ・クロス」で知った名優リチャード・ハリスが最後の最後までタフガイだった。

このスパックと呼ばれる新しい映画作りの流れと言うのは、今までの単なるパニック映画を越えて、映画の持つ明るく楽しい娯楽性とともに、人類の未来をもう一度見つめ直そうと言うサイエンティフィック・パニック・アドベンチャラス・シネマの登場がちょうどこの作品が作られた時代は新時代を迎えたと言える。基本的には大いなるロマンと真実の姿を謳い上げたまさに未来からの映画にふさわしいこのスパック映画の第一弾が本作である。スパック映画の第一弾はマリン・サイエンスと呼ばれていて、続く「スター・ウォーズ」はスペース・サイエンスと呼ばれていた頃が懐かしい。一方は海に、一方は宇宙にそのテーマを求めていて、アメリカで合わせてスパックロマンと総称され、空前の大ヒットを続けた時代だ。

そもそも現存する地球最強の動物とはやはり本作のオルカだとされているようだ。しかし一般には鯨やイルカのようにその習性や生態がほとんど知られていないそうだ。約9トンの重さと15メートルの長さを誇り、上下の顎に長さ20センチの鋭い歯を持っている。聴覚は特に優れ、音の出所を正確に知る能力、音波を聞き分ける幅の広さ、ともに素晴らしい。形態的には成獣のオスの背びれは長く先端が鋭い牙でメスのそれはそれほど尖っていない。背びれの大きさはスピードと関係があり、それを動かすことにより時速60キロで広い海洋を駆け巡ることができる。メスが約6年で子を産み妊娠期間は12から15ヶ月。1産1、2頭らしく、寿命は30から40年と言われている。常に3から40頭位の群れを作って、他の温血の海獣を食べている。オットセイ、アザラシ、サメ、そして大きなシロナガスクジラさえ襲うことがあるその激しい性格から、海の狼とか大海洋の覇者などと言われているみたいだ。

巨大な鯱の1種で日本では"さかまた"と言われている。性質的には知能指数は人間を上回るほど高く、獰猛で狡知にたけ、復讐心を持っているそうだ。大きさは大体15メートルであり、新幹線1両分との事。体重は約9トン(成人男子150人分)で、背びれは細長い二等辺三角形で、高さは4メートル。この尖った背びれで攻撃を加えるそうだ。歯牙は上下の顎に長さ20センチの鋭い犬歯状48本。あの人食い鮫ホワイトシャークを1口で噛み殺す威力があるそうだ。音声については、音波のような声を発し、仲間同士話すことができて、その音を聞くと、さしもの凶暴なサメも逃げ惑うらしい。色は背側が黒く腹側が白く、その境界線は波形にはっきり見える。分布は一属一種で世界中の海に分布しており、東京湾や瀬戸内海にも入ってきたことがあるそうだ。

獲物は大食漢で大型のサメ、サメはもちろんあらゆる魚を襲って食べる。60頭のオットセイを丸呑みした記録があるみたいだ。特技は10メートル近くジャンプすることができ調教すればイルカをしのぐ演技ができる。寿命は30年から40年と言われており、生まれたばかりは全長2.5メートルだが約5年で成獣し結婚、家庭を持つ。愛情は夫婦や家族の情愛は人間よりも細やかで家族とともに常に一緒に行動するとの事。少しばかり調べてみた。さて、本作は巨大な鯱と海の男の果てしない戦いを描いているが、ハーマン・メルビンの小説を映画化した"白鯨"が思い出される。実際に本作はその"白鯨"を鯱に変えているだけである。この映画の面白さは、スピルバーグの「ジョーズ」やその他のサメ映画や海洋モンスターパニック映画とは違って、どちらかと言うと敵である鯱たちの目線で描かれているため、我々人間がクローズアップされるのである。基本的にシャチの眼差しが主体性をはっきりとさせている。こういった原型を覆すような作風は非常に面白く、主人公の男の執念の有り様にも+ αの作業があると思う。

実際にこの映画はメスの鯱が殺された、オスの鯱がそれに復讐すると言う話である。他の鮫映画では、基本的にそういったものを関係なしにただ人間を食い殺すと言うのが基本ベースになっている。しかしながら本作は決して違う。先にやったのは人間であり、やられたらやり返す、歯には歯を、目には眼をの戦法なのだ。この映画実際に日本の水族館からお願いされて、鯱を捕獲すると言うストーリー性になっているが、これは日本の捕鯨に対してのアンチテーゼなのだろうかとふと思った。なぜならこの映画は通常の海洋パニック映画と違って、加害者としての人間の立場を正当化したのに対し、オルカは被害者である者たちの目線で描かれているからだ。そこが非常に引っかかった。そもそもこの映画の舞台となる北極海(ボフォート海)はどういった国々に挟まれているのかと言うと、グリーンランド、北アメリカ、南アメリカ、アフリカそしてヨーロッパ。その真ん中にあるのが北大西洋であり、南アメリカ東アフリカの間にギニア湾があり南大西洋がある。

そこをオルカと船が通ったりするのだ。その間にはカリブ海配ハイチ島、バミューダ島、キューバ島などもあり、もう少し上に行くとアイスランドがありノルウェー海がありグリーンランド海があり北海がありアイルランド、イギリス、スカンジナビア半島なども出てくる。そういった中を彼らは舵を切り戦うのだ。それにしてもこの映画を見ると人間は圧倒的に不利だなと思う。そもそも海洋学者が見れば、無謀な挑戦と見て取れるだろう。オルカとは学名をオルシナス・オルカと言い、英語ではキラー・ウェール、つまり殺人鯨と言われていて、ソイツは鯨類の中では1番泳ぐのが早く、1番知能も発達していて、1番強い攻撃的な鯨とされているのだから、それを知っていたらまず戦うのは拒否するだろう。見た目は非常にかわいいが、残忍な行為をすることで有名だそうだ。同じく鯨でも動物は食べない巨大なナガスクジラの舌を噛み切り、出血多量で死に至らしめたり、大きなサメを攻撃し殺したりそれを貪り食うとかまさに海の中のキングオブモンスターだ。メガトロンも真っ青なところか(笑)。一度ゴジラと戦って欲しい(爆笑)。

この映画でも確かに、知能数は非常に高いなと思わされたシークエンスがある。とことん主人公の男を追い回して、最終的には北極海に連れ出して、最後の戦いを挑むのだから、なんとも復讐心旺盛な生き物だなと思う。だけどそういった鯱も人間は食べたりしないと言う論文が出ているみたいだ。そもそも動物と言うのは1人の人間に対して復讐したりするものなのだろうか?そこら辺は海洋学者でもないしよくわからないが、この映画はとにかく笑えるほど1人の人間に対してストーカー的に鯱が挑むのである。スピルバーグの「ジョーズ」が徹底的に娯楽を追求した傑作であるなら、本作はもう一つの海の恐怖を描いた全く異なったテーマを持った華麗な色彩と自分にとってオルカと言うのは果たして何なのかと言うものを考えさせられる映画である。それがラストシーンのもの寂しいほど美しい音楽が余韻に残るのである。冒頭の鯱の独特の超音波の鳴き声も印象的だった事も忘れずに言いたい。


そして最後に、主演のリチャード・ハリスが出演している「ジャガーノート」が来月の頭位にハピネットピクチャーズから国内初のブルーレイ化されるんで楽しみだ。
Jeffrey

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