SHOHEI

男はつらいよ 望郷篇のSHOHEIのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 望郷篇(1970年製作の映画)
3.6
おいちゃんが危篤という報せを受けた寅は柴又に帰ってくる。しかし危篤はただの冗談で寅は激怒。なんとか事なきを得たものの、今度は北海道の竜岡親分が病に伏していると聞き、寅は弟分の登を連れて飛び出していく。竜岡親分と再会し彼の生き別れの息子を探してほしいという頼みを引き受けた寅。息子を探し当てたものの、彼の不憫な生い立ちに同情し…。

山田洋次が監督に復帰したシリーズ5作目。この間わずか1年で5作も作り上げる驚異のハイペース。縁起でもない冗談から物語は始まるが、実際においちゃんを演じる森川信はこの少し後にこの世を去ってしまうのだから今となっては笑えない。親に恵まれなかった寅だけに、竜岡親分の息子の不憫な生い立ちに並々ならない同情を寄せるペーソスある序盤の展開。人生を見直した寅は浦安の豆腐屋で堅気仕事に打ち込む。地道に生きることを決意した兄を見守るさくら。とにかく劇中最初から最後までさくらは寅のことを心配しっぱなしで、どっちが兄なのか姉なのか見分けがつかなくなってくる。今作のマドンナ、豆腐屋の娘の節子からこの家業をずっと続けてほしいと頼まれ、浮かれて二つ返事で快諾する寅。しかし節子が結婚を機に豆腐屋をやめることを知るとあっけなく職を手放し、彼は姿をくらましてしまう。ここ数作クズっぷりがなりを潜めていただけに開いた口が塞がらない、呆気にとられる展開。事情を話さない節子も節子だが。しかしマドンナに恋人がいると知るやあっさり引き下がってしまういつもの流れは正直マンネリ。2作目『続・男はつらいよ』のように、恋敵と寅のあいだに何らかの因縁があった方がおもしろい。後半30分で恋敵が登場するようではあまりに描き込みが足りない。本来はこれでシリーズを畳む予定だったらしく前身となるTV版のキャストがゲストで参加しているが、マドンナ役の長山藍子は元さくら役。どことなくさくららしい愛嬌が漂う。寅さんもいつもよりマドンナと親しげ。
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