イチロヲ

男はつらいよ 望郷篇のイチロヲのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 望郷篇(1970年製作の映画)
4.0
自身の将来を憂えたフーテンの寅次郎(渥美清)が、風来の生活から足を洗い、人並みの労働者になろうとする。国民的人情喜劇シリーズの第5弾。監督自身は最終作のつもりで製作したが、衰え知らずの人気により、継続せざるを得なくなったという逸話あり。

前半部は、札幌の病院で死を待っている恩人に会いに行くシークエンス。札幌は大通公園が一瞬だけ映る程度だが、その後の小樽では蒸気機関車を乗せた転車台(小樽市総合博物館に保管されている)が回転する場面が収められている。

後半部に入ると、両極端な性格をもつ寅次郎が、まるでロボトミー手術を受けたように肉体労働者へと変貌する。千葉県浦安市に舞台を移して、マドンナ(長山藍子)への岡惚れが発動。そして予想通り、玉砕へと一直線。

寅さんが「働きたくない病」を患っている中年男にしか見えないが、「不幸な出自により、歪な人間性をもつようになった人間」という観点では、形容できないほどの悲哀が伝わってくる。
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