夏のむせかえるような暑さが画面から伝わる。松本清張の原作の映画が現在もかつてのように面白く見られるかはともかく、横浜駅から佐賀に向かう東海道本線の列車内の映像は(おそらくロケと思われる)当時を知る資料として興味深い。橋本忍の脚本は細かいところに手が届いているが、犯人が乗るバスを追う途中、崖の岩場に爆弾を仕掛ける現場に遭遇しバスを追えなくなるシーンは必要だったかどうか。原作にあるのかもしれないが少々やり過ぎなような気もする。大木実が2人の女性の間を揺れるシーンが挿入されるが、結婚を決意する貧乏暮らしの高千穂ひづるよりも銭湯の娘の川口のぶのほうがかわいらしい。