Yuichi

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのYuichiのレビュー・感想・評価

4.9
人類補完計画はわたしと他者が溶け合い一体となる事、つまり他者のいない世界を目指すことである。そこは、感受性や性格の差異がなく、そのた
め争いが生じないユートピアである。シンジはそのユートピアを否定し、他者とのディスコミュニケーションが残る現実世界を選択した。他者との接触は怖いが、他者からの承認や愛がないと人間は自我を保つことが出来ない。だから他者が必要である。物語では、シンジと唯一の他者であるアスカが現実世界に戻され、シンジはアスカの首を絞める。しかし、アスカは首を絞められながらもシンジの頬をさする。そして、手を緩めて泣きじゃくるシンジに対して、「気持ち悪い」と言い放つ。

他者とは自分と異なるものであり、その他者が自分を傷つける。他者がいること、身体があることを望んだシンジだが、自分と異なる他者を目の前にし、恐怖した。しかし、アスカとの身体的接触により、理屈や表面上の言葉では感じ取れない他者のまごころを感じ取る。取り返しのつかない事をしたと感じシンジは泣きじゃくるがアスカはいつも通りにシンジを罵
る。アスカとシンジは合わせ鏡のように似たもの同士だが、アスカの方が一歩先に大人になった。他者の行動が自分を傷つけるし、自分の行動もまた他者を傷つける。そのことに気がつきシンジを許容した。シンジもまたそれに気づく。
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