ブラックユーモアホフマン

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

4.0
エヴァの一番面白いところはアニメシリーズの終盤から続くこの実験映画的な試みだと思う。

ロボットアニメもしくはウルトラマン的な王道SFモノに端を発して結局それが極めてパーソナルな作品になっていくという。

ひたすら庵野秀明が自分自身にカメラを向け続けたドキュメンタリー映画のようなもんだなと思う。

同時に作品全体が言い訳のようにも感じるけど。「逃げちゃダメだ」って言いつつすぐ逃げるからなぁ。難解さやシュールに逃げるなよぉ。

この映画そのものがエヴァンゲリオンという作品自体の考察をしている。100%自己言及。メビウスの輪のように行ってたかと思ったら帰ってくるようにできてる。またそれ自体が作品のテーマとも合致してる。

生と死、男と女、自己と他者、親と子といった人間にまつわることを聖書と宇宙をモチーフに描く。
『2001年宇宙の旅』が究極的な引き算でそれを語った映画だとしたら本作は真逆の究極的な足し算という感じ。

今となってはあまり目新しい発想でもないからそろそろそういうんじゃないやり方を考えなきゃな。

特に男としては、屈折した男の内面をグロテスクに露わにしている部分が見ていて居た堪れないというかとても居心地が悪くなる。シンジの自己嫌悪、自己憐憫も気持ち悪い。そしてそれは同族嫌悪だったりする。

エポックメイキングな作品なんじゃないかとは思いつつも、こういうのはちょっとズルいんじゃないかとも思うので、本当は最後まで王道SFアニメとしての体裁を保ったまま、同じことを言ってくれてたら良かったのにと思う。
ある意味ではそうなんだけど、ちょっとメタ的過ぎる。