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星の旅人たちのkojikojiのレビュー・感想・評価

星の旅人たち(2010年製作の映画)
4.0
No.1660 2010年アメリカ/スペイン映画
監督はエミリオ・エステベス
なんと息子ダニエル役の俳優さん。(最後に知った。父親役にマーティンシーンをよくぞ選んだ!お見事)

ロードムービーの傑作。

 スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かって数百キロ歩く巡礼の旅。私は、この旅は今回2度目である。

もちろん映画の話。

 前回は、仲違いしていた3兄弟が、親の遺言で、仕方なくこの巡礼をさせられる話。勿論旅が終わる頃には、父が子供達に何を伝えたかったのかわかる。映画は「サン・ジャックへの道」だ。

 さて今回は

 眼科医トム(マーティン・シーン)はゴルフのプレイ中に一人息子が巡礼の旅の途中、不慮の死を遂げたとの報せを受ける。
 妻の死後、疎遠になっていた息子は何を思って聖地巡礼の旅に出たのか、それを知るため、トムは亡き息子の足跡をたどる。今回は息子を理解するための旅。それはもちろん自分を取り戻す旅になる。

 何が悲しいと言って、おそらく子供の死に立ち会うことぐらいが悲しいことはないだろう。そのつらさをまともに受けていたら、普通の精神では持たない気がする。

 私もこのトムと同じ立場に立ったら、きっと彼と同じように息子の足跡を辿る旅に出るだろう。それは自分のためでもある。
そういう意味では、この旅の設定はすごく納得感があり、素直に旅に出れた。

 純度100パーセントのロードムービーだ。   
 景色は勿論思う存分楽しめる。それに音楽もいい。これはロードムービーには欠かせない。
加えて、毎日酒席。酒が美味しそう。料理も美味しそう。言うことなし。と言うことで、歩くことがきつそうに見えない。🤭

 例によって旅の道連れができるが、このメンバーがロードムービー評価を決めると言って過言ではない。

 最初に知り合ったオランダ人ヨースト(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)。彼の登場ははっきり言ってすごく嫌だった。私ならすぐに別れるタイプだ。ところが彼が次第に味が出てきて、この仲間には欠かせない存在になるから不思議だ。

 紅一点カナダ人サラ(デボラ・カーラ・アンガー )は禁煙が目的でこの旅に出たと言うことになっているが、トムと同じように心に傷を持つ。

 アイルランド人のジャックは作家。スランプから抜け出すための旅なのだろう。この男も私にはうるさいタイプだった。

 と言うことで、私ならすぐに別れる嫌なタイプばかりなのだが、旅が終わる頃にはもっと一緒に旅を続けたくなるから不思議。
それぐらい素晴らしい旅なのだ。

 息子が最初に登場するシーン。巡礼の旅に出る息子ダニエルを空港に送る車の中で、父と子は言い争っている。
父は「生き方は違うが、私はこの人生を選んだ」と言う。これに対しダニエルは
「人は人生は選べない。生きるだけだ。」と答える。
 これが息子の最後の言葉となる。
巡礼の旅の間、父の頭の中はこの言葉が蹴り返していたに違いない。

 このダニエル役は監督のエミリオ・エステベス。
 マーティン・シーンにそっくりで、ほんとの親子に見える。これは絶妙のキャステイングだ。
(※見えるはずだ、ほんとの息子ならー追記)
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