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リバティ・バランスを射った男のkojikojiのレビュー・感想・評価

3.9
No.1528
2023.11.30 視聴 西部劇100

 大根役者ジョン・ウェインが「男」を見せる。何十年後、アジアの片隅で「健さん」という大根役者が演じて喝采を浴びた「男」を、すでにこの時代に彼は演じていた。「男」に痺れる。
健さんが「ヤクザ映画」を超えたように、ジョン・ウェインは「西部劇」を超えていた。
西部劇の最高傑作と言われる「リバティ・バランスを撃った男」は実はいわゆる「西部劇」ではないのだ。嘘だと思ったら、是非観ていただきたい。これは西部劇ではない。男の中の男の恋愛映画だ。
これ以上書くと一部ネタバレになってしまう。
観ていない方は、観た後にこの後のレビューは読んでいただきたい。
どうしても書きたいので書いてしまうから。

 新米弁護士ランス(ジェームズ・スチュアート)がやって来た街は、まだ無法時代の名残を残す町だった。
ランスはこの町で開業しようとしたが、荒くれ者リバティ・バランス(リー・マービン)に身ぐるみを剥がされた。そんなランスはトムに救われ、彼の恋人ハリーが給仕を勤める食堂で介抱されたが、この町では銃が必要と主張するトムには正義感から反発する。
 ランスは報道の自由の志を持つ編集長ピーポディと協力してリバティ一味との戦いを決意し、2人は代議員を選出する町民選挙でリバティを破って当選する。だが直後、逆上したリバティはピーボディに重傷を負わせる。
 ランスはリバティと対決することを覚悟する。

 ランス役のジェームズ・スチュアートがひ弱な弁護士にピッタリ。それだけにジョンウェインのファンはハリーにはトムを選択してほしいと思ったはずだ。
しかし、恋人ハリーは男らしいトムよりランスの方に心を寄せる。
ハリーがランスを愛していることを知った時のトム(ジョン・ウェイン)の表情と演技、その後に酒に酔いしれてあばれる彼が切ない。この西部劇の英雄が演じる失恋シーンに、アメリカ人の中のアメリカ人と評され、長く彼を愛してきたアメリカの観客は涙したに違いない。

 若いリー・マービンの荒々しい演技は、度を超えて凄みがある。やはりこの男、この時代から只者でないことを見せつける。彼はこの映画で注目を浴び、この後スターダムにのしあがっていったと言われている。

西部劇なのにどんでん返し付きのこのドラマ、ジョンフォードにとっても代表作だ。
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