あずき最中

英国王のスピーチのあずき最中のレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
3.9
英語版(日本字幕)で視聴。
日本語字幕の早口言葉の再現度はいかに。

私自身、あまり喋るのが得意でない(詰音ではないものの、滑舌が悪い)ので、アルバート(ジョージ6世)に共感する部分もあり、見ていて胸が痛くなる部分があった。

うまく喋れない王・アルバートのサクセスストーリー+療法士・ローグ(ライオネル)の格差友情ものになるのかなーと思いきや、完全にはそうではなく驚いた。

ローグは患者との関係について、対等であること、友情を交わすことを旨としていたのだが、アルバートは最後まで「ライオネル」(ローグのファーストネーム)では呼ばない。

しかも戦争スピーチのあと、ローグはバーティ呼び(アルバートの愛称)をやめ、陛下と呼ぶようになる。
「ローグ」、「陛下」の呼び合いは1回だけだったので、その後もずっとそうだったかは分からないけれど、このシーンが物語に厚みを出していて、好きである。

アルバートという人はずっと王の存在について怯えて生きてきたひとで、いざ自分が即位しなければならないとなったときも重責を理解している分、大きな不安を抱えていた。しかし、スピーチが上達し、理想の王に近づくことが出来た。
ここで出てくる変わらぬ「ローグ」呼びが彼の真面目さ、(良くも悪くも)ゆるがない王族の誇りを示していて、最後には王としての風格を表現しているように思う。

一方のローグは「兄よりもあなたこそが王になるべきだ」と意見を押し付けてしまったことを反省していた。
ラストの「陛下」呼びは、ずっと自信を持てずにいたアルバートへのエールであり、「あなたこそが王だ」という敬意と信頼を示した言葉だと思う
(そして「やっぱり(立派な王になった)ね」というローグ氏の自信も見えるのがにくい)。
決して揺るがなかった「対等であること」という信念を曲げてまで、「あなたは王なのだ」と示す、ローグの振る舞いに、友情と信頼を感じた。

史実を元にしたフィクションなので、エドワード皇太子のスキャンダルや各登場人物の切り取り方についてはどこまで本当なのかな...と思ってしまったので、3.9とした。
あずき最中

あずき最中